従業員が「うつ病休職」する際の正しい対応は?知っておくべきポイントを解説

従業員からうつ病による休職を申請され、どのように対応すべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。うつ病による休職申請は、正しい方法で対応しなければ、後のトラブルにつながる恐れがあります。

そこでこの記事では、うつ病で休職する社員への正しい対応方法について解説します。休職から復帰までの具体的な手続きについてもお伝えするので、参考にしてください。

うつ病患者は近年増加傾向にある

「うつ病」のイメージ_パソコンの前で顔を覆う男性

近年、心身の不調を抱える患者数は増加しています。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、「うつ病やそのほか心の病気」の通院者数(6歳以上)は2010年には136.3万人でしたが、2019年には164.8万人まで増加していることが分かりました。

さらに経済協力開発機構(OECD)が発表した「メンタルヘルスに関する国際調査」によると、日本国内のうつ病(またはうつ状態)の人の割合は、2013年から2020年の7年間で「約2倍」に増加しています。

従業員からうつ病による休職を求められた場合はどう対応すればよい?

「対応」のイメージ_書面に目を通す女性の手元

従業員から休職を申請されても、休職の必要性や休職すべき期間が曖昧なままでは、処遇を判断できません。一般的に、うつ病などのメンタルヘルスの不調による休職は、本人の希望や会社の考えだけで決めることではないからです。適切な処遇を考えるために、まずは以下の対応をとる必要があります。

まずは「うつ病」の診断書を提出してもらう

うつ病の発症による休職の申請があった場合、はじめに医師の診察を受け、診断書を作成してもらうように伝えます。うつ病は、内面的な疾患です。「仮病なのでは」という懸念を払拭するためにも、診断書を提出してもらい、休職すべきかを確認しましょう。

診断書は、企業が休職制度の適用を判断する際にも必要です。「病名」「休職の必要性」「休職すべき期間」が記載されているかを確認してください。

企業の休業制度や就業規則について説明する

休職が必要と判断された従業員には、十分な休養をとることが第一であると伝えます。症状が回復したら復帰できることも伝え、安心して休養に専念できるよう、制度や規則を説明してください。

リーフレットがあると、休職制度について分かりやすく説明できます。もし作成する予定があれば、以下の項目を記載しておくとよいでしょう。

  • 休職手当
  • 休職期間の上限
  • 復職の条件
  • 復職の流れ
  • 保険料

従業員の休職にあたり就業規則を見直す場合の9つのポイント

本来、うつ病休職処分を含む精神不調による休職は、就業規則に従い命令を出します。というのも、民間企業の場合、休職制度における法律が制定されていません。そのため、就業規則に休職についての規定があることが前提です。

多くの企業では、一定期間の欠勤を経て、求職、退職といった規定を置いています。後のトラブルを防ぐためには、必要とされる事項を就業規則に明記しておきましょう。定めておく事項には、以下のようなものがあります。

  • 休職制度を設けること
  • 休職制度の要件
  • 対象となる労働者の範囲
  • 休職期間の上限
  • 類似の傷病に関して合算を行うこと
  • 診断書提出の義務化
  • 定期連絡の義務化
  • 復職のルール
  • 復職できない場合は退職となること

休職前に確認すべき6つの項目

「就業規則」のイメージ_書類と虫眼鏡

従業員の休職が決まったら、休職前に確認しておきたいことがいくつかあります。事前の確認を怠ると、「聞いていない」「知らなかった」といったトラブルに発展しかねません。特に、休職中は経済的な負担を感じやすいといえます。給与の有無や手当の受給を案内し、必要であれば申請に協力することが大切です。

1. 休職期間について

医師の診断書には、「〇ヵ月のあいだ自宅療養を要する」などと記載されています。しかし、診断書における「休職を必要とする期間」はあくまで目安とし、会社の就業規則に基づいた期間を説明してください。

休職期間の上限が最長どのくらいであるかを就業規則で確認してから、休職を必要とする従業員に伝えましょう。一般的には、休職期間満了時に寛解しておらず、復職が難しいと判断される場合は「退職」となります。

2. 給与について

会社の就業規則に基づき、休職期間中の給与について説明します。自己都合による休職中の給与に関しては、法律で定められているわけではありませんので、支給しない会社が多いでしょう。ただし、「給与補償制度」を導入している会社もありますから、事前の確認が必要です。

休職中に会社から給与が出ない場合、休職前後に有給休暇を使うという選択肢もあります。はじめに有給休暇を取得し、それでも症状が改善しない場合に休職手続きをすることが、従業員にとってよい選択となる場合もあるでしょう。

3. 社会保険の徴収方法について

「厚生年金保険料」や「健康保険料」などの社会保険料に関しては、休職中であっても、従業員に支払ってもらう必要があります。会社と従業員で50%ずつ負担すると定められていますので、負担分を支払ってもらいましょう。

ただし、休職中に給与が発生しない場合、給与から天引きできません。「決まった日にちに会社宛てに振り込む」「休職中は立て替えておく」など、どの方法で徴収するかを事前に話し合う必要があります。

4. 休職手当について

従業員の経済的な不安を軽減できるよう、「傷病手当制度」についても説明しましょう。傷病手当とは、病気やけがが原因で「4日以上」会社を休む場合に、生活の保証を目的とした手当です。最長で1年半、健康保険から標準報酬日額の3分の2が支給されます。

業務上の原因からうつ病を発症してしまい、「労働災害」と認定された場合には、労災保険制度より給付金の受け取りが可能です。また、要件を満たしている場合には、「障害年金」を請求できます。

5. 連絡の取り方について

休職に入る前に、連絡方法を決めておきましょう。連絡窓口を設けて、「どのくらいの頻度」で「どのような内容」について連絡するのかを確認しておきます。休職中は療養に専念するのが望ましいため、負担をかけない配慮が必要です。

とはいえ、あまりにも連絡がないと、疎外感を与えてしまうかもしれません。定期的に連絡を取り、安心して療養できる環境を作れるとよいでしょう。

6. SNSへの投稿について

SNSへの投稿については、一定の配慮が必要であることを説明しておきましょう。SNSは日常生活に深く浸透していますから、会社が利用を規制するものではありません。しかし、投稿内容によっては、服務規律違反にあたることを伝えてください。

休職中の従業員が不適切な投稿をすれば、顧客の信用を失ったり、賠償などの経済的損失を受けたりする恐れがあります。こうしたトラブルを防ぐために、SNSの投稿内容には配慮が必要であると説明しましょう。

休職に必要な手続きと具体的な流れ

「手続き」のイメージ_パソコンとメモ

ここからは、うつ病によって休職する従業員に対し、どのような対応をすればよいのかについて解説します。休職までに必要な手続きや、休職の流れを確認しておきましょう。

従業員から休職の申請がない場合でも、精神疾患により不調を感じている従業員がいるのであれば、対策を講じる必要があります。その際にも、以下の手順を参考にしてください。

面談の機会を設ける

まずは、ストレスチェックなどで不調を感じている従業員と面談を行います。精神疾患による不調は、外見からは分かりにくいケースがほとんどです。そのため、適切な処遇をするためには、体調を正確に把握しておく必要があります。

面談時に治療を受けているという申告があれば、診断書の提出を求めてください。申告がない場合であっても、不調を感じているのであれば、医療機関で診察を受けるように伝えましょう。対面での面談が難しい場合には、電話やWeb面談でも構いません。

医師による診断書の提出を促す

対面または電話やWebでの面談後は、従業員へ医療機関の受診をすすめましょう。医師の診断書を提出してもらい、休職の必要性を確認し、従業員の処遇を決めるためです。

働くことが難しいと判断した場合、就業規則に基づき、休職の手続きを始めます。作業内容の軽減、時短勤務やそれに代わる措置を講じる場合には、契約を見直さなければなりません。労働条件を変更した際は、新しい雇用契約書を締結してください。

休職命令を書面で実施する

休職命令の要件は、就業規則できちんと定めておきましょう。従業員から診断書を受け取り、口頭で休職命令を出すことは、望ましい対応ではありません。 口頭のみで休職命令を出してしまうと、給与がもらえない不満から休職を拒否したり、「退職扱いは不当」などと主張したりすることで、トラブルへと発展する恐れがあるからです。

また、休職制度についての会社側の理解不足が原因で、トラブルにつながってしまうケースもあります。そういったトラブルを防ぐために、以下の項目を記載した休職命令書を発行しましょう。

  • 就業規則上の休職事由
  • 休職の始期および終期
  • 休職期間中の給与
  • 休職期間中の社会保険料
  • 休職期間中の手当
  • 休職期間中の診断書の提出
  • 休職期間満了前の手続き

従業員がうつ病で休職に入る際の3つの注意点

「相談」のイメージ_歩きながら上司に相談する男性社員

うつ病に罹患した従業員が休職に入る際には、いくつか注意しておかなければならないことがあります。「業務の引き継ぎ」や「周囲への公表」がそのひとつです。また、療養中は不安を抱えやすいことが予想できますから、不安の原因を取り除くための対策も必要となります。

業務の引き継ぎは慎重に行う

うつ病で休職する従業員には、業務の引き継ぎを押しつけてはいけません。医師から休職の必要があると判断されているにもかかわらず、業務の引き継ぎによって休職をとるのが遅くなった場合、症状が悪化した責任を問われるケースがあるからです。

「すぐに療養が必要」「出社できない状態にある」と判断されているのであれば、従業員をすみやかに休職させましょう。

周囲への説明はプライバシーに配慮する

従業員の許可を取らずに、病名や病状を公表することは、プライバシーの侵害にあたります。健康情報はセンシティブなものですから、慎重に取り扱う必要があるのです。

精神疾患を含めた疾病に関する情報は、「センシティブ情報」とも呼ばれ、特に取り扱いに配慮が必要な情報とされています。会社全体への周知は避け、休職する従業員の直属の上司や、直接業務に関わるメンバーにのみ伝えるなどの対応が望ましいでしょう。

安心して療養に専念できる環境を作る

休職中は、従業員がさまざまな不安を抱えやすいといえます。会社との関わりが希薄になることで疎外感や孤独感を感じたり、「復職できるだろうか」「キャリアが傷ついてしまうのではないか」などの将来への不安を抱えたりする場合もあるでしょう。

また、給与がもらえない場合には、経済的な不安を抱えてしまうかもしれません。安心して療養に専念できる環境を作るためにも、会社は情報提供などの対応を行い、休職中の従業員を
サポートしましょう。

従業員が休職から復帰する際の4つのポイント

「ソリューション」のイメージ_真剣な表情で空を見上げる男性

休職していた従業員から「復職したい」と言われた場合、しっかりと状況を見極めたうえで、復職が可能であるかを判断する必要があります。ここでは、休職していた従業員から復職の意欲を伝えられた際の対応方法について解説します。

1. 復帰のタイミングは産業医の意見を参考にする

復職の最終的な可否決定は、会社側にあります。従業員から復職の希望があった際、「復職が可能であるか」について、会社が判断しなければなりません。その際の基準となるのが、産業医の診断です。医師の意見を聴取したうえで、復職可否を判断しましょう。
産業医と医師で意見が異なる場合には、産業医の意見を尊重します。産業医は企業状況を把握していますから、就業制限を判断しやすいでしょう。たとえ、本人から強い希望があったとしても、安易に復職させることは避けてください。症状が再発し、トラブルに発展する恐れがあるからです。

2. 復職面談では状況を見極めることが大切

従業員から復職の希望があった場合、面談を実施し、職場へ復帰できるかを判断します。その際は、産業医を含めて面談を進めていくようにしましょう。復職が可能であるかを見極めるポイントとしては、以下のような項目が挙げられます。

  • 就労意欲が高いか
  • 勤務に耐えられる体力があるか
  • 生活リズムが整っているか
  • 業務遂行性があるか
  • 毎日の通勤が可能か

上記を確認したうえで、復職の可否を判断しましょう。

3. 職場復帰支援を活用する

従業員は復職に向けて、生活リズムの定着や運動、人と接する機会を設けるなど、さまざまな準備をしてきたことでしょう。そのため、企業は本人だけでは解決できない部分をサポートししてください。

そのひとつに「職場復帰支援」が挙げられます。復職の前段階として「リハビリ出勤制度」を設けたり、業務を軽減しながら段階的に通常勤務へと復帰する措置を取ったりなど、復職しやすい環境を提供できるとよいでしょう。

職場復帰支援の注意点としては、会社が積極的に復帰支援を進めると、問題視されるケースがあることです。試し出勤に関しても、産業医や主治医の意見を尊重し、様子を見ながら対応する必要があります。

4. 復帰後にも声掛けや配慮が必要

うつ病を含む精神疾患は、さまざまな要因が重なることで発病すると考えられています。周囲からは症状が改善したように思えても、完治したかを判断するのは難しいのが実情です。うつ病は、完治が難しい病気であるともいわれていますから、長期的なサポートを心掛けましょう。復職後も様子を伺い、声を掛けるようにします。

ただし、負担を軽減する目的で業務量を調整しすぎると、かえって焦りやストレスを与えるケースがあることも留意してください。

復職が難しいケースは?休職中の退職勧奨には注意が必要

休職期間中に症状が改善せず、復職が難しいと判断した場合には、就業規則に従って退職してもらうのがよい方法だといえます。ただし、従業員本人に復職の意思がある場合、トラブルに発展してしまうかもしれません。

「不当に解雇された」と訴えられるケースや、「仕事が原因で病気を発症した」と主張されてしまうケースもあるのです。業務起因性が認められた場合、裁判で負けると賠償金の支払いを命じられる恐れがあります。

そういったリスクを防ぐためにも、円満退職を試みるようにしましょう。従業員の意に反して何度も退職勧奨を行ってしまうと、違法と判断されかねないため注意してください。

うつ病による休職者をださないために|「HELPO」ができること

うつ病による休職者や退職者をださないためには、労働時間の管理を徹底したり、風通しのよい職場環境を作ったりすることが大切です。また、メンタルヘルス研修を行い、ストレスチェックの実施によって従業員の心の健康を支援しましょう。

「HELPO」は、従業員の心身の不調を、医師・看護師・薬剤師の医療専門チームによって、24時間365日サポートするヘルスケアアプリです。従業員の健康を維持する「福利厚生サービス」をご検討の方は、ぜひヘルスケアテクノロジーズにお問い合わせください。 

まとめ

「心」のイメージ_手のひらにハートの紙が乗っている様子

従業員からうつ病による休職を求められた場合、まずは医師の診断書を提出してもらい、休業制度や就業規則について説明しましょう。休業制度への理解が不足していると、トラブルに発展してしまうケースもあります。口頭で休職命令を出すことは避け、休職命令書を発行することが大切です。

休職期間中に復職の希望があった場合には、産業医の意見を尊重したうえで、復職のタイミングを見極めましょう。復職後も声掛けや業務面での配慮など、長期的なサポートを心掛けてください。

心身の悩みや不安について、スマホひとつで相談できるヘルスケアアプリ「HELPO」は、従業員の健康のサポートに役立ちます。「HELPO」のサービスについてご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

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