産業医の義務化はいつから?50人未満?常駐義務の概要を解説

企業は職場の従業員規模によって、産業医を選任する義務があります。現在の規模で選任の義務に該当しない場合でも、事業の拡大によって従業員の人数が増える可能性があるなら、事前に産業医の選任義務について把握しておくことが大切です。

本記事では、事業拡大によって産業医を選任する必要性がある企業の人事担当者や経営者に向けて、産業医の選任義務について解説します。選任時の基準や罰則も説明しているため、合わせて参考にしてみてください。

産業医の選任・常駐義務化はいつから?50人未満?

まだ立ち上げたばかりの会社などの場合は関係ありませんが、ある程度会社が大きくなってくると、産業医を配置しなければならない義務が発生します。産業医を雇用しなければならない義務はいつから発生するのでしょうか。以下でご説明します。

常時50人以上の従業員がいる事業場は義務となる

産業医を配置する義務はいつから発生するのでしょうか。

結論から言えば、事業場に50人以上の従業員がいる場合は、産業医の選任義務が発生します。従業員数が50人以上に対し、産業医1人を選任しなければなりません。ただし、事業場の規模によって複数人の産業医が必要になります。

また、事業規模に加えて扱う業務内容によって、産業医の勤務形態が嘱託と専属のどちらかに決まるため、以下の表を参考にして自社の事業規模や産業医の人数、勤務形態を確認しておきましょう。

(参考:元記事から引用https://media.healthcare-tech.co.jp/wp-content/uploads/2022/10/no.70_2-768×269.webp)

「事業場=企業全体」ではないので注意が必要

事業場とは、企業全体を指しているわけではありません。事業場の定義を誤解したままでいると、産業医の選任義務をはたしていない企業と判断される可能性があります。まずは、事業場の定義について確認しておきましょう。

産業医の選任基準になる事業場とは、同一の勤務場所で事業に関連する業務を組織的に行う場所を表す単位のことです。たとえば、複数の地域に支社を持つ企業の場合、「支社=事業場」となります。支社に50人以上の従業員がいるなら、産業医を1人選任する必要があります。

さらに、50人以上の従業員がいる支社が複数ある場合は、支社ごとに産業医を選任しなければならないため注意が必要です。

産業医の選任は法律で義務化されている

産業医を選任することは「労働安全衛生法施行令(5条)」「労働安全衛生法(第13条)」で決められている企業・法人の義務です。したがって、産業医を選任する義務が発生する条件を満たせば、ただちに産業医を選任をしなければなりません。産業医制度の所轄は厚生労働省です。

産業医とは

産業医の役割を把握しておくことは、選任の義務をはたす上で重要です。産業医という言葉を聞いたことはあるものの、医師との違いが何なのか、どのような職務に就いているのか理解しづらい部分もあるかもしれません。ここでは、産業医とはどのような職業で、医師とは何が違うのか、産業医の職務や種類などを詳しく解説します。

「医師=産業医」ではない

産業医とは、従業員の健康管理のために企業と雇用契約もしくは業務委託契約を結んでいる医師のことです。産業医は医師免許が必須ですが、医師免許を持つ全ての人が産業医の業務をこなせるわけではありません。労働安全衛生法第13条第2項により、要件を満たす人だけが産業医になれます。産業医の要件の一例は、以下のとおりです。

  • 厚生労働大臣指定の法人が実施した労働者の健康管理に関する研修を修了した医師
  • 産業医科大学もしくは厚生労働大臣指定の大学を卒業した医師
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した医師(試験区分:保健衛生)

産業医の職務・責任範囲は?

産業医の役割は、労働者の健康管理を行うことです。そのために、以下の職務を行うことを義務付けられています。

  • 労働者の健康管理(健康診断や面接指導の実施、結果に基づく健康保持のための措置、労働環境の維持管理など)
  • 事業場における健康の保持増進のための措置(健康教育や健康相談の実施)
  • 労働衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止に向けた措置

産業医は基本的に毎月1回のペースで作業場などを回り、作業方法や衛生状態に問題がないか確認する義務があります。また、産業医は事業者に対し、労働者の健康管理のために必要な勧告をくだす権限を持っています。

産業医の種類

産業医には専属産業医と嘱託産業医の2種類があり、両者で大きく異なる点は勤務形態です。専属産業医とは、企業と雇用契約を結んでおり、事業所に常勤する産業医のことです。

一方で、嘱託産業医とは複数の企業をかけもちしていたり、事業所とは別の医療機関に勤務しており、事業所訪問が必要なときにだけ産業医業務を行う産業医を指します。出勤日数や契約の種類など、両者の違いを以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

(参考:https://media.healthcare-tech.co.jp/wp-content/uploads/2022/10/no.70_4-768×180.webp)

産業医選任義務違反の場合には罰則がある

従業員が50人以上いる事業場では、1人以上の産業医を選任する義務があります。しかし、選任の義務を果たさず、所定の期間内に必要な数の産業医を選任しなかった場合は、労働安全衛生法第120条が定める産業医選任義務違反になります。違反をした企業は、50万円以下の罰金を支払わなければなりません。

また、産業医の選任が済んでいる企業も注意が必要です。なぜなら、産業医の選任義務が発生してから14日以内に必要な手続きを済まさなければならないからです。産業医の選定後は、事業場を管轄内にある労働基準監督署に「産業医選任届出書」を速やかに提出しましょう。

産業医の選任が終わっていても届出書を提出しなければ、産業医を選任したことにはならないため、忘れずに手続きを済ませることが重要です。産業医の選任報告は、書面だけでなく届出システムによる電子申請も可能です。

産業医の選定以外に知っておきたい3つの実施義務

産業医を選定することは企業にとって必要な義務が社会的な義務を果たす上で重要なことですが、他にも実施すべき3つの義務があります。企業が実施すべき義務とは、以下の3つです。

  • 従業員の定期健康診断結果の報告
  • 従業員のストレスチェックの実施、結果の報告
  • 社内に衛生委員会を設置し、衛生管理者の選任報告

それぞれの義務について、以下で詳しく解説します。

定期健康診断の結果報告

労働安全衛生法では、企業に対し従業員の定期健康診断の実施義務を定めています。また、50人以上の従業員がいる事業場では、定期健康診断の実施はもちろん、診断結果を提出しなければなりません。

定期健康診断の結果は、厚生労働省が定める様式の「定期健康診断結果報告書」を、事業場がある管轄内の労働基準監督署に提出する必要があります。産業医選任報告と同様に、書面ではなく届出システムからの電子申請も可能です。

ストレスチェックの実施および結果報告

50人以上の従業員がいる事業場では、年に1回ストレスチェックの実施と結果報告の義務があります。ストレスチェックとは、労働者のストレス状況を把握するための検査です。ストレスチェックの実施により、企業は産業医による面談や職場環境の改善などのメンタルヘルス対策につなげることができます。

ストレスチェックの実施後は検査結果を集計し、事業場がある管轄内の労働基準監督署に報告書を提出しなければなりません。報告を怠れば、労働安全衛生法第120条の定めにより、50万円以下の罰金が科せられます。

衛生委員会の設置と衛生管理者の選任報告

50人以上の従業員がいる事業場は、衛生委員会を設置し、衛生管理者の選任報告も行わなければなりません。衛生委員会とは、従業員の健康や安全に必要な措置を事業者へ提案するための組織です。

衛生委員会は、当該事業場における事業の統括管理者や産業医、衛生管理者、衛生に関する経験がある従業員によって構成されます。衛生管理者とは、従業員の健康障害や労働災害を防止する役割を持つ国家資格です。

産業医を探すための代表的な3つの方法

事業場で働く従業員の数が50人を超えている場合は、産業医を選任する必要性があることはお分かりいただけたでしょう。では実際に、産業医を選任するためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、産業医を探すための代表的な方法を3つ紹介します。以下の方法を参考にして、事業規模に合った産業医を探しましょう。

地域の医師会に紹介してもらう

事業場がある地域の医師会に産業医を紹介してもらう方法があります。産業医の会員が多く、探しやすい地域で有効な方法です。医師会に産業医の紹介を依頼すると、会員の中から産業医を探して紹介もしくは推薦してくれます。

地域によって対応方法が異なり、医師会の公式サイトに会員名簿を公開している地域もめずらしくありません。会員名簿を公開している地域では、事業場は直接産業医に問い合わせができる仕組みになっています。ただし、産業医を紹介していない地域の医師会もあるため、事前に公式サイトなどで確認しておきましょう。

医療機関に紹介してもらう

産業医の紹介依頼は、医療機関でも可能です。とくに、健康診断を行う医療機関には産業医が勤務しているため、事業場に対し産業医の紹介や契約を行っているケースも少なくありません。健康診断を実施している医療機関と契約を結ぶ場合、産業医報酬に健康診断実施費用が含まれているため、報酬額を安く抑えることも可能です。

ただし、健康診断の繁忙期は医療機関での業務が多忙になるため、産業医業務を十分にこなせなくなるリスクもあります。契約時に、繁忙期の対応について相談しておきましょう。

紹介サービスを利用する

上記の方法で産業医が見つからない場合は、産業医紹介サービスの利用も検討しましょう。産業医紹介サービスの利用は、産業医を効率よく探したい場合に有効です。ただし、産業医紹介サービス会社に対し、紹介料を支払わなければならないため、自力で産業医を探す方法に比べ、コストが割高になる傾向があります。

紹介サービスは紹介料が発生するものの、事業者と産業医の間に入って契約内容の調整などのフォローもしてくれるため、手間をかけずに産業医を選定し、契約を結びたい事業者におすすめです。

従業員の健康は日々の支援が重要!24時間365日相談できる「HELPO」が役立ちます

産業医を選任する義務が発生し、実際に産業医に雇用してみても、従業員の方々にきめ細かい健康指導を提供できるわけではありません。産業医が来社する日は限られていますし、物理的にすべての従業員を対応するのは無理があることも多いです。

従業員を健康増進し生産性を向上させたい企業の方におすすめなのが、ヘルスケアアプリ「HELPO(ヘルポ)」です。ちょっとした健康不安やメンタル不調、体調不良を起こしたときなどに、24時間365日、いつでもチャットで医師や看護師などの医療専門チームに相談できます。チャットなので気軽に相談しやすい点もメリットです。

さらに、アプリを通じてオンライン診療や、特定保健指導なども実施可能です。ぜひ導入を検討してみませんか。

産業医の義務化はいつからなのか把握しましょう

以上、産業医の選任義務はいつから発生するのか、どのような条件があるのかなどについてご説明しました。

繰り返しではありますが、従業員の数が50人以上になる事業場では、産業医の選任義務があります。義務を果たさず産業医を置かなければ、違反となり罰則が科せられるため、選任義務が発生する、あるいはこれから発生しそうな事業者の方々は注意しましょう。
また、嘱託産業医しかいない事業場では、従業員が日常で感じる体調不良や身体の不安を相談するのが難しいケースも少なくありません。ヘルスケアアプリ「HELPO」なら、いつでもどこでもスマホからチャットで医師や看護師などの医療専門チームに相談できますので、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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