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職場のモラハラとは?具体的な特徴と対処法を解説
モラハラ関連の訴訟は増加傾向です。職場でモラハラが発生した場合、加害者だけでなく企業が訴えられることも少なくありません。しかし、モラハラとは何なのか、はっきり分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、職場におけるモラハラの特徴と法的責任が発生するポイントを解説します。企業としてやるべきことを理解して実施しておけば、たとえ裁判になったとしても、企業の責任を果たしたと胸を張って言えるでしょう。
目次
職場で起こるモラハラとは
モラハラが損害賠償や離婚の原因になる裁判が増えているため、「モラハラ」という言葉自体を耳にすることは多くなりました。実際、職場においてモラハラが問題になるケースは少なくありません。働きやすい職場環境を維持するためにも、モラハラがどのような問題なのかを理解しておきましょう。
モラハラとは
モラハラは「モラル・ハラスメント」の略語です。「モラル」は「道徳的な、倫理上の、精神的な」などを意味しており、「ハラスメント」は「嫌がらせ」を指しています。言葉や態度などによって尊厳を踏みにじり、心を傷つける精神的な暴力や虐待がモラハラです。このような陰湿で精神的な嫌がらせは、職場や学校、家庭などで起こります。
「モラル・ハラスメント」という言葉は、フランスの精神科医、マリー・F・イルゴイエンヌが最初に提唱しました。暴言や無視などの精神的な暴力によって被害を受けた人は、ストレスをため込み、心身に重大な影響が出るようになります。深刻な精神障害や自殺に至るケースさえあるため、モラハラを軽く見てはいけません。
なお、法律用語としては採用されていないため、法的な定義はあいまいです。
パワハラの定義
よく似た言葉に「パワハラ」があります。これは「パワー・ハラスメント」の略語です。パワハラは法律用語としても確立しており、職場における肉体的・精神的な苦痛を与える行為の総称として用いられます。
企業におけるパワハラ防止への取り組みは法律上の義務です。厚生労働省によると、パワハラは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定義されています。
厚生労働省が示すパワハラの具体的行為
- 殴打、足蹴(あしげ)り、物を投げつけるなどの「身体的な攻撃」
- 人格を否定するような言動、大声での威圧的叱責(しっせき)、罵倒(ばとう)する内容のメール送付などの「精神的な攻撃」
- 集団で無視するなどの「人間関係からの切り離し」
- 明らかに遂行不可能な仕事の強制などの「過大な要求」
- 仕事を与えないなどの「過小な要求」
- 私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」
モラハラとパワハラは何が違う?
モラハラとパワハラは重なる部分も多くあります。しかし、パワハラは職場内に限られており、職場での地位の優位性を背景に行われるという点がモラハラとの大きな違いです。
モラハラは職場に限らず、家庭や学校などでも起こり得ます。地位の優位性に関わらず発生するため、上司や年長者からだけでなく、同僚や部下が加害者になるというケースも少なくありません。パワハラには身体的な暴力も含まれますが、モラハラは身体的な暴力を含まないという点も異なります。
職場で起こるモラハラの特徴とは
モラハラは家庭、学校、職場などさまざまな場所で起こりますが、ここでは職場で発生するモラハラにどのような特徴があるのかを解説します。モラハラは被害者も加害者も気付かずに放置されてしまうケースが少なくありません。周りが気付いて解決へと導いてあげられれば、ダメージが深刻化するのを防げるでしょう。
モラハラに該当するケース
モラハラ行為は大きく3つに分けられます。「精神的な苦痛を与える行為」と「人間関係を切り離す行為」「プライベートに過剰に立ち入る行為」です。以下のような行為がモラハラに該当します。
モラハラ行為の具体例
- 威圧する態度で言いたいことが言えない雰囲気を作る
- 被害者が話し始めると険しい目線を向ける
- 揚げ足を取る、ささいな言い間違いやミスをしつこく指摘する
- 発言した内容を馬鹿にしたり否定したりする
- 都合の悪い発言は無視することで相手を黙らせようとする
- ささいな言葉に引っ掛かり、激怒したりネチネチと説教したりする
- 失敗すれば責め立てたり説教したり、それ見たことかと冷笑する
- あいさつを無視する
- 会社内の飲み会に誘わない
- 業務上必要な連絡をしない
- 個人の私生活上の事柄にダメ出しを繰り返す
- 休日中、休暇中にもしつこく連絡をする
モラハラの加害者に見られる特徴
モラハラの加害者に見られる特徴には以下のようなものがあります。
- 最初は優しいが、ある日豹変(ひょうへん)する
- 気分によって言うことが変わり、発言の変遷を相手に責任転嫁する
- 自分を正当化し、哀れな自分をアピールする
- 自分より強い相手には下手に出て、弱い相手には強く出る
- 被害者を言いくるめて「自分が悪いのだ」と思わせる
- 他人への共感性が乏しいのに「相手を受け入れてやる心の広い自分」として振る舞う
モラハラ被害の症状
モラハラを受ける被害者は、さまざまなダメージを被ります。代表的なものは以下のようなものです。
【モラハラによるダメージ例】
モラハラにおける企業の責任とは
パワハラやモラハラは職場内のいじめとして捉えられています。被害者が退職に追い込まれたり、心身の病を患ったりすることもあり、企業内や裁判における取り扱い件数も増加傾向です。
場合によっては、加害者だけでなく企業の責任が追及されることもあります。企業のイメージや評価にも関わる問題ですので、モラハラにおける法的な責任の枠組みを確認しておきましょう。
法的責任の対象となるケース
モラハラの法的な定義はあいまいであるため、モラハラに該当する・しないにより法的責任が直ちに生じるようなことはありません。損害賠償請求の根拠になるのは、「心身や財産に損害を加えたことによる不法行為」です。つまり、「退職に追い込まれて経済的な不利益を受けた」「モラハラにより病気になった」といったケースになります。
過去の裁判では、ハラスメント行為が「社会通念上許容される限度を超え、あるいは、社会的相当性を超えるとき」に違法性があると判断されてきました。しかし、「社会通念」や「社会的相当性」は抽象的な概念であるため明確な線引きが難しく、似たような事案でも裁判所によって判断が分かれるケースも見受けられます。
モラハラによって企業が責任を負う理由
モラハラを行った加害者だけでなく、企業の責任が追及されるケースもあります。その法的な根拠として挙げられるのは以下のようなものです。
モラハラにより企業が法的な責任を負う理由
- 働きやすい職場環境を整備し配慮する義務を怠った、または、いじめ問題発覚後に適切な対応をする義務や職場環境の改善に努める義務を怠った不法行為責任
- モラハラの加害者を使用する者として負う使用者責任
- 労働契約に伴う職場環境の整備義務、配慮義務、改善義務を怠ったことを理由とする債務不履行責任
モラハラで訴えられた場合の請求内容
「モラハラで退社を余儀なくされた」「モラハラが原因で心身にダメージを負ってしまった」という場合には、モラハラの加害者を訴えて法的措置が取られるケースがあります。
いじめを見過ごした、あるいはいじめの事実を把握していたにもかかわらず十分な対応をしてくれなかったとして、企業の責任を追及するケースも少なくありません。企業に法的責任が追及される場合の請求内容には、以下のようなものがあります。
【モラハラ裁判における企業への請求内容例】
なお、企業が法的な義務をきちんと果たしていたにも関わらずモラハラを防げなかったというケースでは、責任を負わないという判断が出されることもあります。
企業のためのモラハラ対策
モラハラのない働きやすい職場環境の整備は企業の責任事項です。モラハラが発生しにくい体制作りと、万が一発生してしまった場合の適切な対処方法を理解しておけば、企業としての責任を果たせるでしょう。ここでは、モラハラ対策として企業が取り組める4つのポイントをご紹介します。
1. モラハラを防止する
モラハラやパワハラなどを人権侵害と認識し、人権侵害を一切認めない企業の方針をはっきりと打ち出すことが必要です。
就業規則や服務規律などに、モラハラを含めたハラスメントについての取り扱いや懲戒有無を明記しましょう。必要であれば、人事や評価、働き方などの社内制度を変更または改善し、モラハラの起きにくい環境を作らなければなりません。
社内規則・服務規律を回覧するなどして周知することも重要です。どういった行為がモラハラにあたり、どのような悪影響・リスクがあるのかを社員に知らせます。
自分の行為がモラハラであることに気付いていないケースも少なくありません。ハラスメントやダイバーシティに関する社内研修の実施、行政機関などが開催する研修会や講演会に社員を参加させるといった方法も有効です。
2. モラハラの発生に備える
しっかりとした社内方針があったとしても、モラハラを完全に防ぐことはできないかもしれません。モラハラが発生した場合、できるだけ早期に対応することが被害を最小限に抑える鍵です。
定期的なアンケートを実施する、被害者がすぐに相談できる相談・苦情窓口を設置するといった対策が取れるでしょう。
相談があった場合の対応方法をマニュアル化し、相談しやすい環境や対応フローなどを作成しておくことも必要です。事実関係があると判断された場合の処置を行う「ハラスメント対策委員会」も設置しなければなりません。構成は人事部長や労働組合委員長などです。
モラハラ防止対策は定期的な見直しを行うことで、より実状に則したものとなります。
3. 発生したモラハラに対処する
モラハラの被害相談があった場合には、初期対応をしっかりと行いましょう。プライバシーが確保できる部屋で、被害者と同性の相談担当者を含めてヒアリングします。
加害者や第三者へのヒアリングを実施する際には、協力者や被害者が不利益な扱いを受けないことを説明し、了解を得ることが必要です。
事実関係を把握した上で被害が認められる場合には、就業規則に基づいて措置を検討します。懲戒に値する場合の措置は、けん責、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇などです。懲戒に値しない場合には、配置転換や被害者への謝罪などの措置が取れるでしょう。
被害者と加害者の意見が一致しない場合には、複数の第三者から情報を収集しなければなりません。中立な立場でハラスメントが発生した日時・場所・状況などの証拠となるものを収集します。裁判に発展するケースもあることを念頭に置いておきましょう。
4. 被害者・加害者をサポートする
モラハラ問題を解決した後も、被害者と加害者は引き続き企業の大切な社員です。両者が気持ち良く働ける環境を再構築しなければなりません。被害者が負担なく働ける環境を整えるフォローアップだけでなく、加害者が立ち直れるようケアすることも必要です。
被害者と加害者の関係改善を助けたり、モラハラにつながった原因を取り除いたりすることで、フォローできます。メンタルケアなどのアフターケアも欠かせません。
モラハラダメージは本人が気付かないことも
モラハラは放置しておくことで深刻化します。早い段階で解決できれば、健康面や社内の雰囲気、生産性へのダメージも少なくてすむでしょう。
モラハラによる精神的なダメージは心身の不調を引き起こしますが、初期症状は必ずしも分かりやすいものではありません。体に不調があっても、モラハラとつなげて考えられないケースも多くあります。
本人だけが分かる違和感やささいな不調の段階で誰かに相談できれば、対処方法やモラハラの事実に気付くチャンスになるかもしれません。管理監督者を教育し気軽に相談できる体制にしたり、社外ヘルスケアサービスを利用して周りの目を気にすることなく相談できる環境を作ったりしておけば、問題が小さな間に解決できるでしょう。
小さな違和感を相談できるHELPO導入はモラハラ対策にも
モラハラのダメージが心身に深刻なダメージを及ぼすまで放置してしまえば、回復は容易ではありません。小さな違和感、ささいな不調を相談できるHELPOを導入しておけば、ダメージが小さなうちに対処できます。多くの企業や自治体で利用されているHELPOの魅力を紹介します。
24時間365日、チャットで気軽に健康相談
HELPOはスマホひとつで医師や看護師など専任の医療従事者に健康相談ができるヘルスケアアプリです。24時間365日、いつでもどこからでも相談できます。チャット形式なので、対面相談が苦手な方にも好評です。
小さな違和感やちょっとした不調は、相談するまでもないと放置しがちですが、気付いたときにすぐに相談できるHELPOなら、不調が病気になる前に対処できます。モラハラなど、ストレスが原因であることに気付くきっかけにもなるでしょう。
安心の機能で素早い対処につなげる
HELPOには健康相談の他にも、さまざまな便利な機能があります。診察が必要という場合には、女性医師やカードOKなど条件に合った病院を素早く見つけられる検索機能が使えるため、受診を遅らせません。
併設のHELPOモールは、一般用医薬品や健康食品などを購入できる、ヘルスケア商品特化型ECです。スマホから注文できるため、わざわざドラッグストアに足を運ぶ必要もありません。
まとめ
モラハラとは、言葉や態度によって人の尊厳や心を傷つける虐待行為です。職場で発生した場合には、加害者への損害賠償請求にとどまらず、企業の責任が追及されるケースもあります。モラハラが発生しにくい体制作りと、万が一発生してしまった場合の適切な対処が欠かせません。
モラハラをはじめとするストレスは、社員の心身に大きなダメージを与えます。ダメージが小さなうちに相談できるHELPOを導入すれば、健全な職場環境をサポートできるでしょう。