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有価証券報告書に記載する人的資本開示の必須19項目とは?企業事例もご紹介
有価証券報告書には、経営指標や財務状況、設備投資の概要などが記載されてきました。しかし、この報告書に「人的資本の情報開示」が求められることになりました。
人的資本の情報開示義務化は始まったばかりのため、概要をよく理解できていない方もいるでしょう。そこで本記事では、有価証券報告書に記載する人的資本開示について、いつから義務化されるか、必要項目、メリットなどについて解説していきます。
目次
有価証券報告書における人的資本開示ルールの義務化とは?いつから?
「人的資本開示の義務化」は、人的資本に関する情報を「有価証券報告書」に記載し、ステークホルダー(利害関係者)への公開を義務づけることをいいます。
この義務化は2023年1月31日に内閣府令の施行により決定し、以下のように記載されています。
人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針及び当該方針に関する指標の内容等について、必須記載事項として、サステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」と「指標及び目標」において記載を求めることとします。 また、提出会社やその連結子会社が女性活躍推進法等に基づき、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」を公表する場合には、公表するこれらの指標について、有価証券報告書等においても記載を求めることとします。
また、提出会社やその連結子会社が女性活躍推進法等に基づき、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女間賃金格差」を公表する場合には、公表するこれらの指標について、有価証券報告書等においても記載を求めることとします。
金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について
このルールは、2023年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用される予定です。
人的資本開示の必須項目は?19項目?
人的資本開示の必須項目は、内閣官房の「人的資本可視化指針」に記載されています。具体的には以下の4つの分野において計19項目が対象になります。それぞれの詳細は以下の通りです。
分野 | 項目 |
人材育成 | リーダーシップ、育成、スキル、エンゲージメント、採用、人材維持、後継者計画 |
多様性分野 | 多様性、非差別、育児休業 |
健康安全分野 | 安全、身体的健康、精神的健康 |
労働慣行 | 労働慣行、児童・強制労働、賃金の公正性、福利厚生、組合との関係、コンプライアンス |
これらの19項目について、有価証券報告書において報告しなければなりません。
人的資本の情報開示のメリットは?
人的資本の情報開示は今まで義務化されていなかったため、面倒に感じる方もいるかもしれません。しかし、人的資本の情報開示にはメリットもあります。
投資を呼び込むことができる
昨今では、多くの投資家がESGを気にしています。ESGとは、環境(E:Environment)、社会(S:Social)、ガバナンス(G: Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。
ここには人的資本も含まれており、人的資本に気を遣っている企業であることはプラスに評価され、投資を呼び込めるでしょう。
採用市場でもアピールになる
人的資本の情報開示は、企業が改めて人的資本について考えるきっかけになり、「人的資本経営」を目指していくことに繋がります。
人的資本経営とは、人材を「資本」と捉え、人材に投資することで企業価値の向上を目指すことです。つまり、人的資本経営に取り組んでいることは、人材の育成に力を入れていると捉えられるため、採用市場においても求職者からプラスに評価されるはずです。そうなれば、スキルの高い優秀な労働者を雇用しやすくなるだけでなく、既存の労働者が離職しづらくなるでしょう。
従業員エンゲージメントやキャリア充足度の向上につながる
人的資本の情報開示は、従業員のスキル向上や働き方について改めて考える機会になるでしょう。その結果、人的資本経営に取り組むことになり、健康安全や人材育成への対策を行っていく中で、従業員エンゲージメントやキャリア充足度の向上に繋げられます。スキル開発に対して前向きな従業員には、特に喜ばれるでしょう。
開示について
経済産業省の「人的資本可視化指針」では、以下のように述べられています。
「できるところから開示」を行った上で、開示へのフィードバックを受け止めながら人材戦略やその開示をブラッシュアップしていく、一連のサイクルにステップ・バイ・ステップで臨んでいくことが望ましい。
人的資本の情報開示は義務化されたものの、すぐに対応するのは難しい場合もあるでしょう。「人的資本可視化指針」にあるように、できるところから少しずつ開示していくのがおすすめです。
人的資本開示の企業事例
人的資本開示の企業事例について、以下の3社を紹介します。
- 三井化学
- 旭化成
- ソニー
それぞれの詳細を解説しますので、参考にしてみてください。
三井化学
三井化学では、公式サイトにて以下のような情報が開示されています。
- 外国籍社員数
- 定期採用女性比率
- 障がい者雇用比率
- リーダーシップ開発研修受講者数実績
- 後継者候補準備率
- 女性管理職(課長級以上)比率
- 従業員エンゲージメント向上
- 評価結果のフィードバック面談実施率と納得度
実際の比率や実績を開示するだけでなく、人材戦略に関しての考え方や進捗と今後の計画、具体的な施策や取り組みなども示されています。具体的な取り組みには以下のようなものが挙げられます。
- 働き方改革:テレワーク制度や服装自由化
- 超過勤務削減の取り組み:作業の見直し・人員の強化、時間外・休日労働時間の見える化
- ライフ・ワーク・バランスを考慮した施策:育児休業からの職場復帰支援プログラム、有給休暇の取得率向上
旭化成
旭化成株式会社では、経営戦略の実現に必要な人材の量と質を洗い出し、人材の充足を企画。これに基づき、採用や人材の育成を計画的に実施しています。また、職場環境や社員の活力など、独自のエンゲージメント調査を毎年実施し、その結果をもとに個人や組織の成長を目指しているそうです。
「旭化成レポート2022」には、以下の情報が開示されています。
- 高度専門職人数
- 女性管理職人数
- ラインポスト+高度専門職における女性比率
- デジタルプロフェッショナル人財数
レポートには旭化成グループの人材戦略についてどのような考えを持っているのか、実施していること、人材マネジメント力の強化などについても書かれています。
ソニー
ソニーは、経営陣が企業の存在意義の浸透やエンゲージメント向上に取り組んでいます。社員に対して企業存在意義の浸透度や共感度を調査し、グラフでわかりやすく表示。また、年に1回エンゲージメント指標の測定を実施しており、この結果は役員の評価指標の一部にも反映されているそうです。
なお、「Corporrate Raport 2022」にて、他にも以下の情報が開示されています。
- 社員数
- 役員構成
- 女性管理職比率
- 女性社員比率
- 取締役構成
ダイバーシティや人材理念の考え方について、人材や人権の尊重、企業理念とコンプライアンスなどについて注力事項を記載しています。このように、売上や利益だけではない人材への思いや実態を、グラフなどを用いてわかりやすく記載しています。
人的資本経営には「HELPO」
人的資本経営は、有価証券報告書への人的資本開示ルール義務化により、今後さまざまな企業で施策が行われると考えられます。しかし、始まったばかりのルールであるため、何をすればいいかわからないご担当者も多いでしょう。また、開示項目が多くどう対応すればいいか迷う方もいるはずです。
人的資本経営の推進にヘルスケアアプリ「HELPO」がおすすめです。HELPOは24時間365日、チャットで医師や看護師、薬剤師に相談できます。人的資本開示については、「健康安全分野」や「労働慣行」「人材育成」の改善に利用できるでしょう。人的資本経営を考えている方は、ぜひ導入を検討してみてください。
有価証券報告書における人的資本開示は必須になります
有価証券報告書における人的資本開示は、上場企業などを対象に義務化されます。有価証券報告書には今まで記載がなかったものであるため、数値を出したり新たな項目をプラスしたりと資料作成も大変になるでしょう。しかし、人的資本の開示により、投資家や求職者に自社をアピールできます。
万が一、人的資本経営ができていなかった場合にはあらためて経営を見直す機会にもなり、施策を行うことで企業の成長にも繋げられるはずです。
人的資本経営の一つの施策として、「HELPO」を利用するのがおすすめです。スマホアプリのため、手軽に利用できます。ぜひこの機会に導入を検討してみてください。