「ブライト500」取得!「銀の認定」を取得後の動きや全体の総括をプロジェクトマネージャーと社長が語る

健康優良企業の「銀の認定」の取得および「健康経営優良法人認定制度」の「ブライト500」の認定を受けるべく、ヘルスケアテクノロジーズ(以下、HT)は取り組みを続けてきました。取得を目指される企業が増えていくなか、HTが記録を残すことで後に続かれるみなさんの参考になればと制作してきた本連載も今回が最終回です。 

2023年3月8日にリリースを掲載したとおり、銀の認定の取得およびブライト500の認定をHTは達成しました。しかも銀の認定は満点での取得です。最終回の今回は、銀の認定の内定を受けたあとからブライト500に認定されるまでをプロジェクトマネージャーの2人に、また全体を通しての総括を大石社長にしてもらいました。

銀の認定を満点取得しての感想

冒頭に書いたとおり銀の認定の満点取得、お疲れさまでした。感想を教えてください。

松尾:

素直な感想は「ホッとした」ですね。しかしブライト500の認定までが目標なので『次もやらなければ!』との思いもあったのは事実です。銀の認定ほど何をしたら取れるかがブライト500はまだわかっていませんでしたから。その不安と『何をしていこう…』という迷いが大きくて。

大塚:

100点での取得は、私もうれしかったです。状況は松尾さんから説明があったとおりで、ブライト500の申請基準や認定基準をどのように調べてやっていこうかなと、銀の認定取得後はすぐに頭を切り替えました。

認定取得の連絡はどのように来たんですか?

大塚:

メールですね。申請した担当者宛に届きました。“通ったよ”という賞状のような文面だったと記憶しています。ただ、銀の認定取得の連絡が2022年9月ぐらいで、その後、ブライト500を目指して、せいいっぱい活動してきたのもあり、今では(取材:2023年4月)パッと出てこないぐらい遠い・薄い記憶になっています。

銀の認定は、再提出が多かったです。30ファイルぐらいありました。認定基準に記載されていない追加のリクエストがあるのも驚きでした。100点は簡単には取れないと改めて感じたのを覚えています。

認定基準が抽象的で、“やってみないとわからない”のは、あとから取得を目指される企業さんも苦労されると思います。「具体的にどのようなことをやればいいですか?」と事務局に確認しながら、最初から丁寧にやっていたのにHTでも再提出がありましたから。再提出はどこの企業も経験されると思います。

追加の対応は、大塚さんからみて大変でしたか?

大塚:

大変でした。実は、「追加資料を出してください」といわれてから、中2〜3日しかもらえないんです。「急いでメールを探して!」と松尾さんにもいったり、「今からポスターをこういうふうに!」とバタバタで対応しました。回数自体は1回・申請後1か月程度で、時間は大きくかからなかったものの、急な対応が発生するんですよ。

松尾:

施策の証跡を探したり、スケジュールをメールで辿ったり、作った資料を整えたりしましたね。私から出した資料を大塚さんがまとめて出してくださったんです。

大塚:

あとHTは、健康診断を外注している面で苦労した部分があります。外注の旨を伝えたら、「健康診断を社員が100%受けていて、外注先がしっかり管理している証跡を出してほしい」といわれたんです。しかし健康保険組合を期中に変えていたのが厄介でした。変更の推移をわかってもらう必要が出てきたんです。そのために「過去3年の契約書を出せばいいですよね?」と提案して解決しなければならなくなりました。

契約書を取り寄せてPDFで出すとき、再提出する基準も決まっていません。しかも期間が短い。短期間で考えて決めてやっていくのは神経を使いました。“後出しじゃんけん”で「違う」となると厳しかったので、担当の方が誰で・いつ電話をしたかも記録を残したほどです。

銀の認定取得後、ブライト500に申請するまでの準備

銀の認定を取得したのち、ブライト500の申請にはどのような準備が発生したんですか?

大塚:

ブライト500は、細かい認定基準があります。2か月ぐらいかけて、漏れがないように社内で検討を重ねました。「これに○が付くのでは!?」「今からできることがあるのでは!?」と、追い込んでいったのが大きかったですね。銀の認定取得後は、そればかりやっていました。

自社でリストにチェックするだけで簡単だと最初は思っていたんです。しかしブライト500の方も再提出を求められて驚きました。まったく予期していなかったので。しかも、こちらも中2日ぐらいで出すぐらいの急対応が必要でした。

実は○になりにくい項目がいくつかあり、そこに対するエビデンスが欲しいといわれたんです。2か月ぐらいかけて細かくチェックしていたので、HTは早めに出せはしましたが、予期せぬ対応だったのは間違いありません。適当に〇を付けていたら危なかったです。

とくにHTで大変だったのは保健指導についてです。HTは、健康診断の結果を基にHELPOのチャットを使って相談する流れで特定保健指導をやっています。HELPOの画面をスクリーンショットにして送っていたんですが、そもそも保健指導を自社でやるのは客観性が担保できませんから。

松尾:

またブライト500は、どこかで他と差別化する必要性があるなと感じていました。銀の認定は絶対評価で、ブライト500は相対評価になるんです。HTでないとできなそうな取り組みや特徴的に見える取り組みが求められます。医療従事者がいないと厳しそうなところを積極的に取りにいこうと話をして、検討とエビデンスの用意を丁寧にやりました。

医療従事者がいる点は長所になったんですか?

大塚:

いや、それがわからないんです。フィードバックが、○か×しかありませんから。HTは今回が初めての申請で、社内にノウハウもありませんでした。そこで認定を昨年受けられなかった他社の情報を分析してみたんです。すると国語のテストみたいに、「この項目の記述が悪い」「この要素が書けていない」と発見できました。そこから認定項目を記述にしっかり入れる点と、医療従事者が社内にいる点をアピールする方向性で準備を進めたんです。

松尾:

あとは昨年認定された500社をリストにして、やっていた取り組みで参考になりそうなものをピックアップして分析もしました。できそうなことはすべて手を付けたといえます。医療従事者の存在を前に出して独自な取り組みを押した点に加えて、やってよかったなと思うのは、経年で追って成果を見ているか…何を目的にして、どのような点が改善されたかを数値化・見える化した点です。

経年で成果を追っているかが重要な項目だと感じていて、やりっぱなしだと厳しかったと思います。きちんと会社で目標を設定した上で、到達しなかったときの次のアクションまで考えて提出しないと駄目でしたね。

事務的な話で、どこに・どのように申請したのかを教えてください。

大塚:

ブライト500の認定をしているのは日本健康会議です。ただ健康経営優良法人認定事務局の運営を、経済産業省から日本経済新聞社が委託される形で代行しており、調査委託先の日経リサーチに私たちの確認も行っていました。最終的な書類の提出は専用サイトからのアップロードです。提出する書類は、経済産業省のWebサイトでサンプルが公開されています。そちらで最新のものを確認してもらった方がいいでしょう。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html

また認定申請料を入金してから申請書を提出する流れで、1万6,500円 (税込)を収めるんです。期限までに払わないと不参加になるため、地味に怖かったですね。あとは認定基準がまとまっているので、読んでわかったつもりになっていたところがありました。どのようにアクションするかを具体的に詰めておく必要があったんですよ。量が多くて甘えがあったと振り返れば思います。保険指導がいい例で、いつまでに・どこで・何人にやってもらおうかをプランニングしとけばよかったですね。なんとなく先延ばしにしてしまいました。

松尾:

初めからやっておけば、バタつかなくてよかったかもしれません。各項目に対する具体的なアクションまで詰めてはこなかったんですよね。

大塚:

再提出でやり直しになった施策は突貫でやりました。指摘されて気付くっていうのはリスクだったなと反省しています。

松尾:

アンケートを最初に取っていたのは助かりました。よくなっている変化を見せたり、逆に上がらないなら理由を考えたりしなければならない中で、差を計測するのに最後だけでは使いものになりませんから。最初からイメージしておくべきだったと思います。

銀の認定とブライト500の違いとして、ほかに何か挙げられますか?

大塚:

銀の認定の方が、特に更新はしんどいと思っています。継続を求められる方針に私個人としてはきつさを感じています。ひと月でも漏らすとアウトですから。銀の認定で必要なのは、人事労務の担当者からいうと基本的な業務フローばかりで、それをどのように証拠として示すかを考える必要があります。ブライト500は明らかに+αのアクションが多いものの、HTはやりやすいんですよね。医療従事者がいて、HELPOもありますから。

松尾:

更新には、想定よりもリソースがかかりますよね。

大塚:

医療従事者チームがいるため、施策の運営が人事の手を離れるんです。だから助かりました。ほかの会社はしんどいと思います。やりきれないのではないかと思うぐらいです。

松尾:

医療従事者チームとしては、大変ですが、基準がわかってしまえばやることはそこまで難しくないと私は感じています。逆に、おもしろがっている人が多いです。あとは、取得に向けて1年間やってきた分のノウハウというか、“ここは落とせない”という所をつかめているのは大きいです。だから1年目に比べて、2年目の方が楽なのではないでしょうか。

大塚:

あとは銀の認定が対外的なアピールにあまりならない点は痛いですよね。基本的なことをやっているだけですから。ブライト500は、対外的なアピールに各社使っています。対外発信によって、企業の認知度向上やアピールになる面、採用に使える面などメリットは大きいと感じています。

松尾:

採用のとき、よくいわれますよ。「ブライト500、とっているんですよね」「非常に興味があります」などといって入社してくる人もいます。採用する側の私としては驚きでした。医療従事者は特にその傾向が強いのかなと思います。

ブライト500の認定を受けて

ブライト500の結果は、いつ・どのように届いたんですか?

大塚:

内定の形で、2月末にメールで来ました。「2週間後ぐらいに正式発表になります」みたいに書いてありましたね。申請担当者だった人事の私宛に、認定書のロゴとPDFが送られてきただけです。

松尾:

申請した時期などによって銀の認定は変わるんですが、ブライト500は各社2月の終わりぐらいに発表の足並みが揃います。情報解禁日も3月8日で決まっているので、各社の発表も揃ったはずです。

避けるべきところはどのような点だと思いますか?HTはできたけど、他社さんへのアドバイスとして。

松尾:

社長を巻き込むとか、部署単独でやらないとかはあるかもしれないですね。瞬間的に成功する・取れる場合はあると思うんです。ただし継続しようと思ったらきついのではないでしょうか。

大塚:

HTではフランクに大石社長が発信してくださいましたが、他の会社さんは簡単にはいかないのかもしれないですね。社長を巻き込んで「健康だより」をHTは毎月出していますが、大きい会社になればなるほど巻き込みは難しいのかなと思います。

松尾:

HTはフランクに許可が出るんですよ。何かやりたいといったら、「おもしろくして」といわれるだけで、自由にやらせてもらえるのが大きい。フランクに許可が出たため、スタッフも盛り上がってモチベーションにつながっていたと感じます。トップダウンや制約が多い場合、HTのようなサイクルを作るのは大変だと思います。特に継続を考えているならば、経営層を巻き込んだ上で組織を立ててやっていく必要が出てきますから。

大塚:

人事的な視点でいうと、今回のような認定系の巻き込みは社員があんまりのせられないんですよ。事務的な作業はもちろん、料理教室みたいなイベントが人事総務だけだと簡単にはできない。HTができた要因に、企画力もあると思います。

大石社長からの総括

大石社長からも、全体的な総括や素直な感想をお願いします。

大石:

まず取り組みをやる・やらないの話を最初にしたとき、「本気ですか?」と結構な勢いで大塚さんからすごまれたのがスタートでした。とはいえ私たちはヘルスケアを生業にしている会社だから、「やるべきでしょう!」とガツッといったのを覚えています。言い出しっぺである以上は、全力でサポートしながら、この1年は私も走ってきました。

以前から事業上でコミュニケーションをとってはいたものの、+αの横の連携がスタート後は生まれた印象があります。やってみてよかったですし、継続的にやっていって熱さが増してくるのに期待しているんです。繰り返しによって私たちも成長していき、周りの企業の役立っていけるのは、HTにとって相乗効果以外の何物でもありません。

社長自身の動き方を振り返ってみるといかがですか?

大石:

私自身はいまだにサッカーをやっているので、健康向上のような取り組み自体に腰が重くなる感じもありませんでした。「やってみようよ」と率先垂範でみんなのところにどんどん働きかけていけたと思います。

とはいえコロナ禍で、“フィジカルで・みんなで”といった部分はできなかった面があります。ほかにも今後は、横の連携ができるような取り組みをしたいです。IT企業ですが、ウェットなところが好きな会社なのですよね。

つながりを重視されるのは、会社として掲げている健康経営の一環なのですか?

大石:

そうですね。ウェルビーイング(well-being)といわれるとおり、「体の健康」と「心の健康」にくわえて、私たちが「社会に対してどれだけ貢献できるのか」というトライアングルがバランスよくなっていないと「健康ではない」と捉えるのが元々の健康経営の概念です。その意味でいうと、健康経営の概念に基づいた活動をHTは垂範してやっている会社ですし、私自身もそれを貫き続けただけかなと思います。

今回の取り組みでも苦労は多くありました。それでも医療従事者がいて、IT企業でもあって、トラッキングやモニタリングを行いながらPDCAサイクルを回すノウハウはもちろん、マインドセットが元々染み付いている人たちだったからこそ、やり遂げられたんだと思います。

医療従事者がいる点はどのようなアドバンテージにつながったと感じていますか?

大石:

医療従事者がいるからこその発想力は感じました。逆に、“医療従事者ばかりの病院であれば取得・認定が達成できるのか”といわれても、それはまた違うと思っているんです。デジタルでいろいろと見ていく、HTでやっていたようなトラッキングのスキルは長けていませんから。医療×ITは、私たちの強みなのです。

“健康であり続ける社会を”とHTでは元々掲げていて、それを自分たち自身が実現し、お客様に対してさまざまなところで貢献していければ、おのずと会社としても成長してくるだろうと思っています。自分たち自身がウェルビーイングを達成する。そのためには他者に対してどれだけ貢献できるか、それが完全にイコールですよね。

これから取得を目指される会社さんに向けて一言お願いします。

大石:

ブライト500が採用面接の際に話題に上がると松尾さんが話をしていたとおり、認定取得がマイナスに働くはずがありません。“ブラック企業ではない”ことの証明になりますから。“ではないこと”の証明は難しくて「どれだけ健全に企業の中で仕事ができるか」「健全な労働環境が整っているか」の2点に直結すると私は考えています。ヘルスケアの会社で当たり前のように思われるかもしれませんが、病院やほかのIT企業での就労環境を考えてみると、“ブラックではない”と証明までできるところは多くないわけです。俯瞰して見てみると、相当なアドバンテージを持っていると感じます。

なかにはボトムアップで取得を目指される会社さんもあるでしょう。大事なのは、どれだけ具体性を持った提案ができるかだと思います。提案を全うして認定を取るところまで走りきれるかがピンとこない限り、経営層はGOサインを出さないでしょう。

また部署単独では難しいとの話が上がったとおり、「どれだけ周りを巻き込めるか」にかかってきます。社内だけではなく、外のリソースも活用して“引っ張り込む”作業が大事です。具体なプランニングを一緒にできる仲間を募って一緒に走るのを心がけてみてください。それを経営層に対して見せることが大事だと思います。