「銀の認定」の申請を終えて。半年間での施策の回数や費用対効果をプロジェクトマネージャーが総括 

business executives consulting negotiation meeting in office.

健康優良企業の「銀の認定」および「健康経営優良法人認定制度」の「ブライト500」を取得すべく、ヘルスケアテクノロジーズ(以下、HT)は取り組みを続けています。取得を目指される企業が増えていくなか、HTが記録を残すことで後に続かれるみなさんの参考になればと本連載を公開してきました。 

第5弾となる今回は、「銀の認定」の申請を終えたタイミングで、プロジェクト前後での社内の変化や全体の費用対効果などをプロジェクトマネージャーの2人に総括をしてもらいました。 

プロジェクト開始時のアンケート結果

businessman SURVEY and Results Analysis Discovery Concept

2021年12月にはどのようなアンケート結果が出ていましたか? 

松尾:管理職の健康課題に対する意識は、上のような結果でした。「部下をマネジメントするにあたって気にかけている健康課題」として、食事・飲酒・運動・喫煙はとくに関心が低かったです。本人の思考が影響するため、『部下たちの自由だ』と管理職が気にかけていなかったのが結果に現れたのかもしれません。

全体的な健康リスクの指標として、「運動習慣」が課題だとデータに現れていたのが個人的には気になりました。全体的にネガの回答が3割超えをしている点と、「まったく気にしない」や「まったく習慣がない」の割合が運動習慣は大きかったのがスタート段階のデータで出ていたので。 

アンケート結果を見たとき、担当者としてどのような感想を持ちましたか? 

松尾:正直な感想は、『こんなものかな』だったかもしれません。ジムに通っている人が私の周りには多く、運動習慣がある人が全体的にももう少しいるのかなと思っていたため、ないと答えた人が思ったより多かったのが気になりました。逆に「睡眠時間」が思ったよりはよい結果だったかもしれません。 

大塚:アンケートの結果(内容)は「銀の認定」の取得時に細かくチェックされないんですよね。そのため100点で認定を受けるために求められる項目に注力していたのが私の本音です。

もちろん今年の結果を基準にして来年以降で比較などができれば、健康経営の状況を可視化できるので施策の取り組み方も変わるかなと期待しています。 

2022年8月のアンケート結果 

最終的な結果を続いて教えてほしいんですが、アンケートの集計は終わっていますか? 

松尾:上が、2022年8月に行ったアンケートの結果をまとめた資料です。一番下は、プロジェクト開始当初(2021年12月)と申請直前(2022年8月)のデータを並べたシートです。

プロジェクトリーダーとしての感想を教えてください。 

松尾:健康に対する意識は高くなったかなと思います。食事のときはとくに、気にしている・会話に出てくる機会が増えました。 

大塚:食べる順番や血糖値の上昇についてセミナーで聞いた話が自然と私も印象に残っています。今までできていなかったことを意識するようになりました。また文章でもらうよりも、前に出て実際に話してくれたセミナーの方が印象に残ると感じています。 

松尾:医療従事者側の目線でいえば、『みんな、こんなに知らないんだな』という発見にもつながりました。とくに「女性」のところは、女性の健康に対する男性からの理解が進んでいない。興味がないのではなく、『触れてはいけない』と男性側は思っていたんでしょう。そのようななかでも、セミナーを行えば積極的に話に入ってくれる人が多くいました。知ろうとする姿勢は元々あったのだと思います。 

あと、医療者である自分にとっては、一般の方と違い、他人の健康の方に普段から関心がありましたが、活動を通して自分の健康にも興味が沸きましたね。一緒に取り組んでいる施策もあり『意識しようかな』と思い直す部分もありました。 

大塚:“医者の不健康”みたいな話ですか?不健康だったのが自分も気をつけようと? 

松尾:そうですね。『きちんとしなければ!』という意識が私も生まれました。あと「栄養」などは改善しやすいんでしょうね。意識しているのが目に見えて感じられます。逆に「喫煙」は難しいと今も思っています。禁煙を進めようと世間的な風潮もあるのに。何をやったらやめてくれんのか、来年以降も検討を続けたいです。 

かかった経費や費用対効果 

お金の話も聞いていいですか?プロジェクト全体でいくらぐらいかかったんでしょうか? 

松尾:ウォーキングイベントの商品を入れると125万円ぐらい。全体でみて一番大きいのが、社員に貸与するFitbitを95個購入した分です。ウォーキングイベントの景品としては13万円ぐらいで、あとは運動器具類を購入したり、「女性」のところでフェムテック商品をいくつか購入したりしました。 

社内の決済はどのようにやっていたんですか? 

松尾:稟議を通せば買えるようになっていました。元から予算立てをしてやっていたわけではなくて、「何かおもしろいことをやってよ。それで必要なら買えばいいじゃん」と言われていて。交渉した上ではありますが、その都度で稟議を上げたりしていました。 

社長の大石の方針なのかもしれないですが、“おもしろいことをやればいい”という方針が会社にあったからできた面はあると思います。Fitbitの稟議は通らないと思いましたもん。 

お金をかけた意味は感じられましたか? 

松尾:お金をかけてよかったと思います。Fitbitもみんなつけてくれましたし、状況を可視化できるので意識向上につながっていた面はあったはずです。またFitbitのデータをセミナーの説明に活用する場面も見られました。あとはフェムテック商品の購入も意味があったと感じています。実際に触れる機会が男性社員にはほぼないので、おもしろかったなと思います。評判も良かったです。 

また、女性の健康に関しては、男性だけのセミナーも開催しました。参加者をあえて男性だけに絞ったことで、自由度が高くできたのもよかったと思います。生理の不快感を体験するためにジェルを使った実験を行いました。さすがに下着に直接ではなかったですが、腕で試せるように工夫できたのもよかったと思います。 

来年はどのような点にお金を使いたいと考えていますか? 

松尾:健康的な行動を継続してもらえるための工夫に費用を割きたいですね。たとえばウォーキングは、イベント期間中はがんばるんですよ。しかし終わった途端に歩かなくなってしまうので、お金をかけた工夫を実施してみるのもアリかなと思っています。 

大塚:何にどこまで費用を使うべきなのかは、どこの会社でも共通の悩みになると思います。1年目なので、HTが手探りだったのは間違いありません。今回のような機会がないと使わせてもらえなかっただろうなと私も思います。あとは時間や人件費をどれほど割いたかも検証しなければいけませんよね。 

松尾:人件費でいうと、本業に支障が出てない点や、時間外まで残っている人が目立たなかった点はうまくできた証拠かなと思います。施策のための時間を確保したのもよかったかなと。 

認定に向けて実施した施策の内容と回数 

施策の回数はどれぐらいだったんですか? 

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イベント 2回 

ウォーキングイベント 

ベジチェックイベント 

※野菜摂取量を計測する機械を使ったチェック会 

社内セミナー 8回 

※銀の認定の項目には入っていない、女性関係のセミナーなども含まれています。 

コラムの配信 24回 

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松尾:上のような施策を半年間でやってきました。月一回で行っている全社会で時間をもらい、社員が集まっているなかでセミナーを実施したので、参加者を多くできたのもよかったと思います。ただ来年以降は、出社した人向けの対面研修セミナーと、オンライン形式のセミナーを分けてもいいかもしれないですね。 

対面前提で考えたセミナーをオンラインでつなぎはしたんですが、オンラインからの参加者に話をふったり一緒に意見交換をしたりするのが難しいと感じました。すでに話が挙がった「女性」のセミナーは、オンラインだと実物に触れられませんし。 

大塚:私は、全体的な意識を向上する部分に関心を寄せていました。経営者の巻き込みとリテラシーを上げるところ。「健康経営をやるぞ!」と宣言したため、参加を求めやすくなった部分があったと人事の立場からは感じています。 

また参加率を上げる上で、参加したい・行きたいと思うためには、「一緒にやっていく」・「一緒に参加しよう」と会社全体や経営層がメッセージを出すことの大切さも感じました。経営層が巻き込めるような風土にHTも変わりましたし、継続的に参加率を向上させる要素に今後もなってくるのではないかなと思います。 

健康経営のプロジェクトを始めるにあたって、「社員のエンゲージメント」みたいな言葉が自然と会話のなかで出てきています。違う言い方をすれば、心身の健康ですかね。「健康面だけを対策するのではなく、他につなげなければならない」などと、管理職たちから話が出てきているんです。 

“これが課題だ”と話に挙がったのち、健康経営をやるにあたってどのようにする必要があるか・何か業績や生産性につながっているか。そこまでの紐付けが必要だと人事の立場から感じています。整理や定義付けをして、フィードバックをしていくサイクルをきちんと作ることが今後の課題になりそうです。 

認定は問題なくても100点かまでは不安がある

実際に100点を取れそうですか? 

松尾:取得はできると思っていますが、100点はどうですかね。取り漏れが出てしまうかもと少し思っています。結構、ドキドキですよ。100点での取得前提で動いている部分もありますから。申請を終えたタイミングでは『やりきった』と思ったんですが、『どうやって続けてこうかな』の方が今は大きいです。 

大塚:私はやりきれた部分が大きいかもしれません。というのも工夫したところがありまして。最初に提出したアウトプットが78点で、エビデンスの提出を求められて他に追加で25点を出して、合計103点のファイルを送ったんですよ。そして103点の提出物とは別で、認定する側の担当者が見やすいようなリストを作ったんです。 

“ここの提出に関してはこの項目です”・“このような目的でこのようなものを当社がアウトプットしました”という説明を添えて一覧表を別で送りました。もちろん認定されるまでドキドキは続くとは思いますが、『これ以上できない』と私は思って出しています。 

まとめ 

前例がなく基準が曖昧ななか、プロジェクトマネージャーの2人も悪戦苦闘したのがおわかりいただけたのではないでしょうか。紹介したとおり2022年7月に申請を終え、あとは結果を待つのみです。次回の記事では「銀の認定」の結果をお知らせできるかと思います。次回もご期待ください。