頼むから、健康診断は予定通りに受けて!健康経営優良法人認定をヘルスケアテクノロジーズが取得する理由や裏にあるスタッフの努力

ヘルスケアテクノロジーズ(以下、HT)は、医師・看護師・薬剤師にチャットで24時間365日の健康医療相談が可能なヘルスケアアプリ「HELPO」(ヘルポ)の開発提供を行っている会社です。本記事では、そのHTが「健康経営優良法人」の認定を目指すために行っている活動を“中の人”の目線で赤裸々に紹介しています。

「健康経営優良法人」の認定を今後目指す企業の参考になれればと考え、連載にて記事を用意していきます。

本記事は、連載記事の第2弾です。前回の記事はコチラからご確認ください。

はじめに

毎月開催してる全員参加の社内イベント「HT全社会」で、社長の大石が「健康企業宣言」をしました。あれから仕事中にストレッチをしたり、健康診断を早めに受けるように促されたりしていますが、「そもそもHTが何をやっているのか」を社内のメンバーでも全員が理解してないと考えています。この連載記事で詳しく解説していきますので、社内のメンバーにもあらためて読んでほしいです。

HTでは「健康経営優良法人」の認定を取得できるように活動していますが、その中でも上位の会社が選ばれる「ブライト500」に認定されるべきと、より厳しめに健康経営に取り組むことになりました。「HTがなぜそのような認定を受けるのか」・「そもそも認定とは何なのか」を社長はじめ、プロジェクトメンバーに広報担当者が聞いてみました。

なぜ、HTは健康経営優良法人認定を目指すのか

取得に向けて動き始めたきっかけ、現状の課題意識

「ミーティング風景」_ヘルスケアテクノロジーズ株式会社CEO大石

――健康経営優良法人認定を取得するのはどんな経緯があるんでしょうか?――

大石(社長):
HTは、ソフトバンクのグループ会社として、社会課題の解決に取り組むために創業しました。とくにHTの取り組むべきキーワードが「医療費」。いま国全体で医療費は40兆円を超えていて、2025年までに70兆円を超えるとの推察がされているのは、社内で何度も言ってますよね。

――2025年に70兆円になるってかなりの増加ペースですよね――

大石:
70兆円といっても、手術などの高度医療に対する費用が主になっています。そして高度医療の患者たちを辿っていくと、重症化する手前で何かしら体調を崩したり、慢性疾患があったりして、そこから悪化していく流れが多い。医療費を減らすには重症化する手前からアクションが必要なのに、現状の医療制度だと状況がわかってからでないとアクションができないので、これが課題だと認識しています。

――それだと医療費の削減は難しいのではないでしょうか?――

大石:
そう、難しいんですよね。いまのままだと医療費は下がらないし、高齢化がますます進むのもあって、現状から医療費は増えていくとしか考えにくい。しかも税収も上がっていかないという問題もあるので、財政難も見据えて医療費の削減をサポートするためにHTは立ち上がりました。

認定取得する目的

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社CEO大石

――会社設立の経緯はわかったんですが、HTが健康経営優良法人認定を取得する目的は何なんですか?何かいいことがあるんでしょうか?――

大石:
HTは「健康経営」を掲げています。“他社に勧めるのに、自分のところはどうなんだ”とか“自分ではできていないことを他人に押し付けるのは何なんだ”となるため、まず自分たちで取得するという流れになったわけです。

――たしかに他人に勧めといて自分が取得できていないのはよくないですね――

大石:
あと中長期的に見ていくと、食生活や睡眠などのパフォーマンスが低下すると仕事のパフォーマンスも低下すると考えています。だから健康経営優良法人認定の取得に向けた取り組みを通して、会社全体のパフォーマンスを上げたいと思っているんです。経営者目線で当たり前の話かもしれませんが、みんなに健康で余生を終えてもらいたい。仕事していたときは元気だったのに引退したらポックリみたいなのは避けたいですし、病気で苦しみながら最期を迎える人も見たくありません。長期的にはそこまで考えています。

健康経営優良法人認定とは?

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社のCEO大石とプロジェクトメンバー

※左から松尾(PM)、大石(社長)、大塚(人事)、大澤(広報)

健康経営優良法人認定とはそもそも何なのか?また取得するまでの道のりでどのような取り組みが必要なのか?ここからは実際に認定に向けて動いているスタッフも交えて話を聞きました。

認定取得までの道のり スケジュール

健康経営優良法人認定までの道のり(図)

――認定取得に向けてどういう動きをしているんですか?――

大塚(人事):
上のようなスケジュールで準備をしているんです。スケジュールの組み方は大体どこの会社も一緒かと思います。苦労している点はいろいろありますが、制度を管轄している省庁の問い合わせ窓口に電話で確認する手間が大きいというのはありますね。

役所関連の“あるある”だと思いますが、認定を取得するために必要な施策として「○○に関するセミナーを実施してください」とあるのに、“どんな内容か”・“何分ぐらいのセミナーなのか”、“月に一回なのか/半年に一回なのか”などの明確な基準が書かれていないんです。そのために詳細はひとつずつ全部確認しなければなりません。

また認定取得を目指す多くの会社で、中心になって動くのは人事部になると思います。しかしこのような問い合わせだけでなく、多くの書類作成や施策の実施などが必要になるので、通常の人事業務との併行はかなり大変だと思います。

銀の認定とは?

「ミーティング風景」

――スケジュールの中に「銀の認定」取得とありますが、これについて教えてください。

大塚:
「健康経営優良法人認定」を取得する上で、まず取得しなければならない認定が「銀の認定」です。健康促進に取り組むことを内外に宣言する「健康企業宣言」をし、実際に健康づくりの取り組みをして、実施結果のレポートなどを健康保険組合に提出する。そして健康づくりに注力した企業の証明である「健康優良企業」の「銀の認定」を取得できることになります。さらに難易度の高い「金の認定」もありますが、まずは「銀の認定」を受けるところからのスタートです。

――健康経営優良法人認定と銀の認定、2つも準備が必要なんですね――

大塚:
実は「健康経営優良法人認定」の申請には、特別な書類の作成は不要なんです。「銀の認定」を受けた後に、健康経営優良法人に関するチェックリストに自分たちでチェックを入れて申請をするだけで済むため、「健康経営優良法人認定」の方は大きな手間はかかりません。

ただし「銀の認定」を取得していないと、健康優良法人の申請もできない仕組みになっています。「銀の認定」の取得は書類を用意するなど少し厄介で、健康増進のため取り組みを周知するためのメールの印刷やセミナーの写真や健康診断の受診実績など、すべてを6ヶ月分細かく書類で用意しなければなりません。

認定のためのポイント評価について

ストレッチタイムの様子

――銀の認定を取得するためのポイント評価の制度はどのようになっているのでしょうか?――

大塚:
「銀の認定」を受けるためには、「従業員の皆様は検診を100%受診していますか?」や「業務中などに体操やストレッチを取り入れていますか?」といったヒアリング項目があり、それぞれで配点がされています。大きく分けると、(1)健診結果活用(2)健康づくり環境の整備(3)食(4)運動(5)禁煙(6)心の健康…の6項目になっていて、80点以上取るのが一つの基準です。

健康保険組合が「健康企業宣言チェックシート」や「健康企業宣言採点基準」などの名前でウェブサイトに公開しているので、細かいポイント設定はそちらを見てみてください。

※以下では、健康保険組合連合会東京連合会さんが公開しているシートのリンクを掲載しておきます。

(参考:健康企業宣言チェックシート

(参考:健康企業宣言STEP1 採点基準

――「銀の認定」のための点数だとHTはどのような状況なんですか?

大塚:
取得に向けて動き出した最初の時点での自己採点は76点。追加でなにかとひと項目でもクリアできれば、ベースといわれる80点になるから最低限はクリアできそうだなと思っています。ただし社長の大石さんから言われているのは、「100点満点での取得」です。目標達成を目指して努力を続けています。

また点数に大きくかかわる健康診断の受診率という項目があるんですが、社内でまだ受けていない人が1名だけいて……。

期限が3月までなので追いかけているところです。その人が受診してくれたら健康診断受診率100%を達成できるので、健康診断を受けたかどうかを直接聞いてみたり、メールやチャットを使ってコミュニケーションしたりしながら毎日追いかけています。

――お疲れさまです……。ちなみに社員一人ひとりができることはありますか?――

大塚:
会社から指示されたことをきっちりやるのがまず第一です。たとえば特定保健指導の項目に40歳以上でひっかかると、そのうち少なくとも半分の人に、長くて6ヵ月間の特定保健指導を受けさせないといけません。

しかし会社の人事としては、健康保険組合などと別途覚書を締結するなどしてデータをもらわないと、指導を受けているかなどを追いかけられなくなってしまいます。決められたときに、従業員が自ら診断に行かないと人事部など管理するスタッフが苦労するわけです。

大石:
特定保健指導は他の会社でも実施率がもともと低い。健康診断の結果が返ってきて“ここがDだからもう一回病院に行ってください”と言われても実際は受診しない人が多いんです。さらに特定保健指導の対象者になった場合には、3ヵ月間などの長期にわたり、保健師などに連絡をしながら日々指導を受けるのがルールになっています。しかし本人任せでは受けない人が多数なのが世の中の現状です。特定保健指導の実施率も認定に関わってくるため、認定を目指している場合は担当者が苦労します。

大塚:
健康診断結果のアップデートが2ヵ月後なのも問題ですね。健康診断を受けてから、最低でも2ヵ月のタイムラグがかならず発生します。そのため「銀の認定」を受けたいと思っても、2ヵ月のギャップがあり、健康診断の受診率を確認できないまま今期の申請期間が締まってしまうこともあるんです。ある程度自己申告に頼る面も出てきて、人事としては追いかけられなくなるので、可能な限り早めに健康診断を受けて欲しいなと思います。

認定取得に向けての準備

どんなチームを組成したのか

「ミーティング風景」_ヘルスケアテクノロジーズ株式会社CEO大石

――人事ががんばっているのはわかりましたが、認定取得の中で会社の中にどこか変化はありましたか?――

大石:
ベンチャー企業で若い会社であるからか、ハードワークしている人がそもそも多い。会社にいる時間も長いし、テーブルの上を見ても、体に悪そうな食べ物が並んでいたりします。顔色が良くない人も多いと私は感じていました。コンビニでお菓子を買ってきて配りあって労をねぎらう様子がよく目につきます。以前は甘いお菓子が多かったのに、最近はドライフルーツとかナッツとかに変化したのを見て、全体で健康に対する意識が少しは変わったのかなと感じているところです。

――社長、そこまで見ているんですね――

大石:
しっかり見てますよ(笑)。健康に関するセミナーを社員向けに定期的にしたりしている成果かなと思っています。社内に栄養士がいて、太る仕組みや糖分を摂るときの理論などを聞く機会が多くあるのはHTならではの光景です。タバコに関しては、かたくなに吸い続けている幹部がいますが、その人に対しての声掛けが増えて、意識改革もできているなと感心したりもしています。そもそもHTの喫煙率は低いですが、内部に医療従事者がいるのが大きな要因だと考えています。

健康経営優良法人の認定を目指すプロジェクトに、人事だけではなく、営業や企画職などのいわゆるビジネスメンバーと、HTならではの特徴として医療従事者が入っている点は大きいです。他社ではあまり見かけないチームになっているし、医療従事者の意見もいっぱい反映されていますから。医療従事者がいる組織はあってもHTほどビジネスサイドに関われているケースは少ないと思います。

チームメンバーの簡単な役割分担

ミーティング風景_ヘルスケアテクノロジーズ株式会社CEO大石

――医療従事者の立場として、本プロジェクトに関わることにどのような感想や考えをお持ちですか?――

松尾(PM 看護師):
大石さんのおっしゃるとおりで、認定取得のプロジェクトに関わることは、以前の業務にはない新鮮さでやりがいも感じています。前職は病院勤務で、指示通りに動くのが求められましたから。認定取得プロジェクトでは、医療従事者が前面に出られる体制になっていて、“自分たちが主導していくプロジェクト”だとの認識が生まれました。

病院に来た人のどこが悪いかは見ただけでわかるケースもあります。そしてケアの方法も大体イメージがつくんです。だから、あえて言うとすれば、対応自体は簡単といえます。しかし健康な人だとそうはいきません。理論を説明しても、実践してくれるとは限りませんから。“簡単だ”・“おもしろい”と思わせる施策を実施していこうと思っています。医療従事者だけでなく、ビジネスサイドのメンバーとの相乗効果があるからこそ、私たちならば他とは違った施策ができるんじゃないかなと考えているところです。

――チームはどのような感じで体制作りがされたんですか?――

体制図

松尾:
体制図にある「健康施策の検討チーム」が「銀の認定」の取得に必要な点数を取るための取り組みを実施しています。メンバーには健康経営アドバイザーの資格を持っている人もいます。

さっき大塚さんが言っていた配点項目に合わせて「ヘルスリテラシー向上」「メンタルケア」「食」「運動」「女性」「禁煙」のグループを作っています。各グループのメンバーは、看護師や保健師に加えてビジネスサイドのメンバーも入れて組成しました。

各グループの主題が評価の対象となり、それぞれでセミナーを開催したりするんですが、認定に必要な回数など満たせているかを大塚さんと私で全体のプロジェクトマネジメントをしています。進捗確認の打ち合わせを隔週で行いつつ、各グループの中で困りごとや課題が出てきたら都度ミーティングをセッティングして、改善策を話し合うなどしてここまで進めてきました。

大石:
ひとくくりに医療従事者と言っても、それぞれバックグラウンドのちがう人たちがたくさんいるのもいいところだと感じています。前職で透析が必要な患者さんを診てきた看護師などは、すでに手遅れな状態の患者さんを目の前にして「もっと手前でなにかできたのではないか」と後悔していたとも話していました。医療現場でのさまざまな経験をHTでの仕事に活かしてほしいなと思っています。

――医療従事者のみなさんはすごい期待されていますが、新しい取り組みを始めた影響で仕事がブラック化している……なんてことはないのでしょうか?――

松尾:
大変ではありますが、気持ち的には楽しんでやれています。能動的に考えながら働けているので。あとは残業も必要以上にしないように言っていますかね。「何をやればいい」「どうやったらいいの」と聞かれっぱなしで序盤は大変でしたが、最近は慣れてきてみんなも時間の使い方がうまくなったなと感じています。ビジネス側のメンバーとも話しながら、業務の折り合いをうまく付けられるように私も管理に努めているところです。

大塚:
人事の業務は、格段と増えています。。。実は最初に認定取得に向けてのプロジェクトマネジメントを打診されたときは一度断ったんですよね。業務の負担が増えるのは目に見えていましたし、ほかの仕事もありましたから。それでもHTは、プロジェクトを組んで全社的に認定取得に取り組む方針がとれたので、ここまでできたんだと考えています。既存の業務の合間に、人事部だけで認定取得を進めるというのは、無理があると思います。

他社の場合は、人事だけが躍起になっている場合もありそうですが、社員の協力がないと取得はむずかしそうです。HTは認定項目ごとにチームを組んで、なかには医療従事者を配置しています。そして全社を上げて本気で動くからこそ、当事者意識をもって社員は取得に向けて協力してくれているんだと思いますね。

健康企業宣言の実施

健康企業宣言の様子

――全体会で社長が健康企業宣言しているの、みんなで聞きましたね――

健康企業宣言STEP1宣言の証

松尾:
「銀の認定」取得に向けて最初に行うのが「健康企業宣言」です。加盟している健康保険組合にエントリーすることで宣言書を発行してもらいます。HTの場合は、月に1回の「HT全社会」で大石さんから宣言として発表してもらいました。

正直にいうと、認定取得のプロジェクトメンバー以外は「ふ〜ん…」や「またなにかするんですか?」と他人事のように思っていたというのがリアルなんじゃないかなと思われます。ただ「健康経営」という言葉自体をみんなが聞いたことがあったのは、他社とは違うかもしれないですけどね。それでも「うちも認定を取るんだ」程度の気持ちでみんなスタートしていたはずです。

認定取得だけでなく、健康になるアイデアを具現化しよう!

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社CEO大石

大石:
プロジェクトメンバーがしっかりがんばってくれているから、今のところは順調だと思います。ただひとつ注文を付けるとしたら、認定に向けてみんなもっとアグレッシブにやってくれるとうれしいですね。

行政が設けた枠にハマるような施策は出ていますが、”あったらいいな“や”こんなことをやたら面白いな“というような楽しむ要素がもっとアグレッシブに出てきてもいいと思っています。アイデアが出てもなかなか実現までは至らない。具現化するところまで能動的にやってくれるのをみんなには期待します!私も楽しみたいので!

まとめ

「健康経営優良法人」の認定を取得するためにまずは、「銀の認定」を取得する必要があります。「銀の認定取得」のためには、社員向けに決められた施策を実施するなど加点項目をクリアしなければなりません。さらに施策を実施した証拠になるような書類の提出などが必要なことも今回書いてみました。

またHTぐらいの規模になると、認定取得に向けて動くのが人事だけでは無理があります。そのためプロジェクトチームを組成して全社で取り組んでいることをHTの工夫として紹介しました。これから取得に向けて動かれる方はぜひ参考にしてみてください。

「健康経営優良法人」の認定取得について、どのようにしたら良いかわからないなど、ご質問があれば内容によってはお答えできる場合もあります。

次回以降の記事では、より詳しい施策の内容などを紹介していく予定です。次回の記事にもご期待ください。