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精神疾患の労災認定|企業が把握しておくべき内容とは
従業員の健康に配慮した職場環境の整備は企業の責任とされています。最近特に注目されているのは、メンタルヘルスケア対策の重要性です。精神疾患が労災認定されるケースもあるため、企業がメンタルヘルスケア対策に取り組むべき理由や、具体的な対応策を知りたいという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、精神疾患が労災認定される要件や、労災認定が企業に与えるダメージについて取り上げます。労災事案が起きてからではなく、起きないように対策を講じるべき理由が分かれば、労災認定に伴うダメージを回避できるでしょう。
目次
精神疾患による労災認定とは

ストレス社会と呼ばれる現代、精神的疾患を抱えて休職や退職に追い込まれるケースは少なくありません。ストレスの原因が職場にあると考えられる場合には、労災認定されることもあります。ここでは精神疾患が労災認定されるプロセスを解説しますので、精神疾患による労災認定の線引きがどこにあるのかを理解しておきましょう。
労災認定とは
労災認定がどのようなシステムなのか、整理しておきましょう。仕事中や通勤途中の出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡に対して、保険給付が行われるために加入するのが労働者災害補償保険(労災保険)です。すべての企業に加入が義務付けられており、保険料は全額企業負担となっています。
労災保険から保険給付を受けるためには、生じた病気やけがが労働災害(労災)であると認定されることが必要です。これを労災認定と呼びます。
2020年の法改正でパワハラも労災の対象に加わった
2020年に労働施策総合推進法が改正され、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)対策が義務化されました。この改正に伴い、労災の認定基準にもパワハラが追加され、職場でのいじめや嫌がらせとは一線を画すものとして位置付けられています。
なお、パワハラの定義は「1.優越的な関係を背景とした言動であって、2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、3.就業環境が害されるもの」というものです。
パワハラの加害者とされるのは、上司など職務上の地位が上位である人物だけでなく、「同僚や部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その人物の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合」や「同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗または拒絶することが困難である場合」も含まれます。
精神疾患が労災認定された場合の補償
精神疾患が労災に認定された場合には、さまざまな補償給付が受けられます。代表的な補償は以下のようなものです。

精神疾患が労災と認定されるには
精神疾患が労災に認定されるためには、以下の3つの条件をクリアしなければなりません。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病している
- 精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められない
これら3つすべての条件を満たしていなければ、労災認定はできません。精神疾患の労災認定件数は、年々増えてきてはいるものの、請求件数に対する認定率は31.9%とかなり厳しいのが現状です。
精神疾患による労災認定が企業に及ぼすデメリット

中には労災を隠す企業もあります。従業員の精神疾患が労災認定されると企業にはデメリットが及ぶため、隠したくなる気持ちも理解できますが、これは明確な法律違反です。
精神疾患による労災認定にどのようなデメリットがあるのかを認識しておけば、予防に力を入れる動機付けになるでしょう。ここでは考えられる3つのデメリットを取り上げます。
企業ブランドや信頼の低下
精神疾患が労災認定されれば、マスコミに報じられたり、インターネットの掲示板やSNSでうわさが拡散されたりする恐れがあります。拡散される情報をコントロールすることはほとんど不可能です。結果として、職場環境や労働環境の悪い、いわゆる「ブラック企業」というイメージが付いてしまう場合もあります。
せっかく築き上げてきた企業ブランドが低下するため、売り上げにも影響が及ぶでしょう。企業としての信頼を失ってしまうと、最悪の場合、取引停止や従業員の集団退職につながってしまうこともあります。その損害は甚大です。
書類対応や裁判の可能性も
労災申請に必要な書類の準備は、基本的には該当する従業員が行います。しかし、企業でそろえなければならない書類などもあるため、実質的には企業が行うことになるでしょう。
申請後は、労働基準監督署による調査や現場検証の立会などが必要になることもあり、対応には時間も労力も取られます。
労災認定された従業員が、企業を相手取り裁判を起こすケースも少なくありません。こうなると、裁判にかかる時間や費用などが加算されていくことになります。
労働基準監督署の監査対象になる可能性がある
労働基準監督署は、定期的に「臨検監督」と呼ばれる企業への立ち入り調査を行い、労働基準法や労働安全衛生法などの法律違反がないかなどを調べます。立ち入り調査によって法律違反やグレーな制度運用が指摘されると、是正勧告や行政指導につながるケースも少なくありません。
臨検監督は抜き打ちで行われることもあり、労災認定が多いと、この臨検監督の調査対象になりやすくなります。臨検監督調査では、勤務実態や労働関係帳簿の確認、経営者や現場にいる従業員へのヒアリングなどを行うため、対応にはかなりの時間と労力が必要です。
精神疾患における労災認定基準

精神疾患が労災と認定されるためには、認定基準の対象となる精神障害であること、業務による強い心理的負担があったこと、業務以外に精神疾患を引き起こす要因が考えられないこと、という3つの条件をクリアしなければなりません。これらの条件の内容を詳しく見てみましょう。
1. 認定基準の対象となる精神障害
労災認定の対象疾患であるかどうかを見分ける場合に使用されるのは、国際疾病分類ICD -10第5章「精神および行動の障害」という分類区分です。この分類区分では、精神障害をF0からF9までの10種類に分類しています。労災認定の対象となる代表的な種類は以下の3種類です。

(参考: 『ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害』)
2. 業務による強い心理的負荷
業務による心理的負荷は、発病前おおむね6か月の間に起こったものが評価されます。ただし、いじめやパワハラのように出来事が繰り返されるものについては、それが始まった時点からの心理的負担が評価対象です。
労災認定を受けるためには、以下の2つの条件のいずれかに当てはまっていなければなりません。
- 業務上の重大な事故、レイプなど深刻なセクハラ、極度の長時間労働など、特別の出来事が心理的な負荷となっている
- 厚生労働省が作成した具体的な出来事の表に照らし合わせ、心理的な負担が「強」と判断されるもの
具体的な出来事の中には、仕事上のミスや違法行為の強制、長時間労働の継続、いじめやパワハラなどがあります。それぞれ「弱」「中」「強」を判断する具体例が上げられており、労災認定されるのは「強」のみです。
(参考: 『業務による心理的負荷評価表』)
3. 業務以外の要因による発病ではない
業務以外の出来事や本人がそもそももっている要因(個体側要因)が精神疾患を発病させたと考えられる場合には、労災認定は下りません。とはいえ、職場以外のストレスが全くないという方はほとんどいないでしょう。厚生労働省では、具体的な出来事に心理的負荷の強度を定めており、精神疾患の主な原因になったかどうかを判断します。
【業務以外の心理的負担の具体例】

(参考:『業務以外の心理的負荷評価表』)
精神疾患による労災を防ぐには

従業員の精神疾患すべてを防ぐことはできません。しかし、労災認定される精神疾患を防ぐことは可能です。精神疾患の労災認定は企業にも多大のダメージを与えるため、労災事案が発生してから対策に乗り出すのでは遅すぎます。今すぐできる対策の柱を確認しておきましょう。
職場環境の見直し
職場環境において従業員の生命や心身の安全を確保することは、企業に求められている当然の責任です。メンタルの不調が起きにくい職場環境を整えるのはもちろんのこと、不調を早期発見できるような体制を構築し、社員の安全を確保する必要があります。
気軽にメンタルヘルスについて相談できる窓口の設置や定期的なストレスチェック、社内アンケートの実施により問題点を把握し、改善していくという環境改善のプロセスは、継続的に行っていかなければなりません。
精神疾患を未然に防ぐ対策
まずはメンタルの不調をできるだけ早く察知することが重要です。勤怠管理や密なコミュニケーション、管理監督者との定期的な面談などで小さな不調のサインを見抜かなければなりません。
休みが取りやすい環境をつくる、社員同士の交流の場をつくる、定期的なストレスチェックの実施などもメンタル不調の早期発見やストレス軽減に有効な対策となります。
メンタルヘルスケアには、本人が行うセルフケアと管理監督者や企業によるサポートの両方が必要です。外部資源を利用した健康相談サービスの導入や福利厚生による健康サポートなども活用できるでしょう。
メンタル不調を抱える従業員への対応
メンタル不調への対応は早さが鍵です。長引けばより深刻に、回復しにくくなってしまいます。メンタルに不調を感じている従業員がいれば、ストレスとなる労働環境を改善するための対策を講じましょう。不調の段階でストレスが解消されれば、重篤な精神疾患に進むのを防げます。
【メンタル不調の従業員への配慮として取れる具体策】
- ミッション変更や部署移動
- 勤務時間の変更(時短勤務)
- 軽作業や定型業務への従事
- 残業や深夜勤務の免除
- 交代勤務から日勤への転換
- 危険の伴う業務やストレスの大きな業務の免除
- 休業
休業する従業員が安心して療養に専念できるよう、疾病手当金などの経済的な補償や職場復帰への支援、休業の最長(保障)期間などの情報を提供することも重要です。
HELPO導入で小さな違和感・不調に素早く対応

企業のメンタルヘルス対策としてぜひご活用いただきたいのが、スマホで気軽に健康相談ができるヘルスケアアプリ「HELPO」です。ストレスは心身の両面にダメージを与えます。HELPOは、ストレスによる心や身体の不調を小さなサインの段階で相談できる、効果的なセルフケアサポートサービスです。その特徴をご紹介します。
いつでもどこからでもチャットで気軽に健康相談
ストレスによるダメージはさまざまな形で表れます。本人にしか分からない小さな違和感がメンタル不調のサインであることも少なくありません。「病院に行くほどのことでは」と考えて放置することで、深刻な病気へと発展してしまうケースも多くあります。
HELPOは、24時間365日、スマホひとつで健康に関する相談ができるヘルスケアアプリです。対応するのは医師や看護師、薬剤師の専門知識をもったチームなので、安心してご利用いただけます。「対面は気を遣う」という人でも気軽に相談できるチャット形式である点も大きな魅力です。
多機能だから対処がスムーズ
HELPOは、健康に関する相談以外にも利用できる多機能アプリです。「女性医師常駐」「カード利用可」など、条件を絞った病院検索ができます。オンライン診療も可能で、病院へ行く元気がないという人でも診療を遅らせることがありません。
併設のHELPOモールを使えば、一般用医薬品や健康食品、化粧品、日用品などをオンラインで注文することもできます。わざわざドラッグストアに立ち寄る必要がないため、体力的にも精神的にも楽です。
まとめ

精神疾患が労災認定されるためには、認定対象の精神障害であること、業務による強い心理的負担が認められること、業務以外の理由が考えられないことといった条件をクリアしていなければなりません。労災認定は企業にとってもダメージがあるため、労災申請につながる精神疾患を防ぐ対策が必要です。
メンタルヘルスケア対策としては、できるだけ早く不調に気付き適切な対処をすることで、深刻な精神障害の発病を防がなければなりません。ヘルスケアアプリHELPOを導入すれば、心や身体の小さな不調の段階で、気軽に相談・対処につなげられるでしょう。


