妊娠中に気をつけたい主な病気について 

「妊娠中のこの症状大丈夫? 〜緊急性が高い症状と受診目安について〜」のコラムでは、妊娠中の緊急性が高い状態についてお伝えしました。しかし、それ以外にも自覚症状がない妊娠中特有の病気もあるため注意が必要です。そこで今回は、妊娠中に特に気を付けてほしい病気について詳しく解説するとともに、日常生活における対策についてお伝えいたします。

※本ページの記事は、妊娠・出産・子育てに関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

妊娠中の主な病気

妊娠高血圧症候群とは

妊娠20週以降から分娩後12週までに高血圧症状がみられることがあります。収縮期血圧が140mmHg以上かつ/または拡張期血圧が90mmHg以上になった場合、「妊娠高血圧症候群」が発症したと診断されます。妊娠34週未満での発症は重症化しやすく、注意が必要になります。自覚症状がなく、血圧測定や尿検査など検診でわかることが多いですが、重症化すると頭痛、眼のかすみ、吐き気などを伴うことがあります。

糖尿病や高血圧の治療中の方、お母さんの年齢が40歳以上の方、初産婦などの方がなりやすいといわれています。お母さんにはけいれん発作や脳出血、血栓(血の塊)ができやすい、赤ちゃんには発育不全などが起こる可能性もあるため注意が必要です。塩分が過剰にならないようにだしやお酢などの調味料を上手く活用し、ビタミンやミネラルなど不足しがちな栄養素を取れるバランスの良い食事を意識しましょう。

妊娠糖尿病とは

妊娠中に初めて血糖値の異常を指摘された場合をいいます。自覚症状がなく、血液検査や尿検査など検診でわかることが多いです。肥満、糖尿病の家族歴のある方、お母さんの年齢が35歳以上の方などがなりやすいといわれています。お母さんには羊水量の異常や網膜症や腎症などの糖尿病合併症の悪化など、また赤ちゃんには低血糖や巨大児などの合併症が起こる可能性があります。

※妊娠中の糖尿病による影響や対策などについては次回のコラムで詳しく解説します。

切迫早産とは

妊娠22週以降37週未満に赤ちゃんが出てきそうな状態をいいます。お腹のはり、腹痛、性器出血、破水などの症状がみられます。原因としては細菌感染や感染に伴う炎症、精神的ストレス、栄養不良、子宮奇形などのほか、子宮頚部の術後や、前回の妊娠時早産だった場合などもなりやすいといわれています。お母さんには子宮の細菌感染の問題がなければ通常の出産との差はありませんが、赤ちゃんには未熟で生まれることでさまざまな後遺症や合併症が出現、感染症のリスク、命にかかわる可能性もあるため注意が必要です。ストレスや心身の負担を避ける、感染を避けるため避妊具を使用しての性行為などの対策が大切です。

常位胎盤早期剝離とは

妊娠20週以降から分娩経過中に、胎盤が子宮体部からはがれてしまう状態をいいます。持続する下腹部痛、お腹のはり、性器出血、胎動が感じられないなどの症状がみられます。常位胎盤早期剥離の経験がある場合や、妊娠高血圧症候群、切迫早産、お腹のケガなどがあるとなりやすいといわれています。お母さんには血栓(血の塊)ができる、胎盤が剥がれた後の子宮の壁から大量出血し、最悪の場合は亡くなるなどの危険があります。赤ちゃんには胎児機能不全、後遺症、脳性麻痺や死亡などが起こる可能性もあるため注意が必要です。日々の血圧管理などを心がけましょう。

妊娠中に大事なこと

【妊娠中】のイメージ_女性がお腹の前でハートマークを持っている状態

妊娠中に気をつけたい病気についてお伝えしました。合併症などのリスクもあるので、心配になる人もいると思います。

妊娠中に起こる病気は発症のメカニズムが明らかになっていないものもありますが、以下のポイントに注意して妊娠生活を過ごすようにしましょう。

生活リズムを安定させる

妊娠中は日頃から十分な休息をとり、無理のない規則正しい生活を心がけ、適正な体重管理にも気をつけましょう。

抱え込まずに相談をする

また、ストレスなど心身に負担がかかることはお母さんや赤ちゃんにもよくないので、妊娠生活に不安を感じた場合は一人で悩まずに家族や友人の方にも相談しましょう。

妊婦検診は必ず受ける

定期的に行われる妊婦検診は必ず受けるようにして、少しでも気になることがある場合は医師や看護師に相談するようにしましょう。仮に病気が発症してしまった場合でも、早期に適切な対処を行うことで母子への影響を減らすことができます。

参考文献
・医療情報科学研究所「病気がみえる vol.10 産科 第2版」pp92,93,104,105, 136,162,165,166,メディックメディア, 2010
・医学書院「標準産科婦人科学第4版」pp339,340,348,349,370,412,413,岡井崇、綾部琢哉: 2017
・公益社団法人 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン2020
・日本糖尿病・妊娠学会「妊娠糖尿病になりやすい人はどのような人ですか?」2022年4月閲覧
・厚生労働省「妊産婦のための食事バランスガイド

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著作/ヘルスケアテクノロジーズ株式会社
文/看護師 嘉村誠子(ヘルスケアテクノロジーズ株式会社所属)