生産性向上に取り組むには?企業ができる取り組みと注意点

働き方改革やワークライフバランスが注目される中、多くの企業は生産性の向上を重要視しています。国際的な競争や労働力の減少などの影響を受け、少ない経営資源でより成果を得るために、部署や企業単位の取り組みが求められています。効果的な実践には、生産性向上について理解し、具体的な対策を取り入れることが重要です。

この記事では、生産性向上に向けた取り組みのポイントや活用できる補助金や制度についてご紹介します。

生産性向上とは

「生産性」のイメージ_上昇曲線を描いているグラフ

曖昧なイメージを持たれやすい生産性という言葉ですが、正しい定義があり、計算式によって数値化することも可能です。また生産性を向上させるためには、適切な認識を持つ必要があります。まずは、生産性についての共通理解を深めるために、基本的な知識を解説していきます。

生産性向上の意味

生産性とは、企業が投入したリソースに対して、どれだけ成果や付加価値を生み出せたかを表す指標です。生産性は、労働や設備、原料などの生産要素(インプット)と、得られた価値(アウトプット)との比率で表されます。インプットが少なく、アウトプットが多いほど生産性が高いという意味です。

生産性には、「労働生産性」「資本生産性」「全要素生産性」の3種類があります。企業活動の現場でよく用いられているものは「労働生産性」で、これはさらに付加価値で表す「付加価値労働生産性」と得られた生産量や売上金額で示す「物的労働生産性」の2つに大別できます。

生産性向上が注目される理由

生産性向上が注目される理由として、「労働力の減少」や「国際市場における競争力の低下」が挙げられます。

国内で問題視されている少子高齢化は、国全体における労働力にも影響しています。具体的な数値を見ると、総務省統計局による「労働力調査年報(2020年発表)」では、労働力人口が前年比で18万人ほど減少しました。労働力を支える労働人口というインプットが少なくなる中で、成果や付加価値を維持、拡大させるためには、生産性向上に取り組む必要があります。

また、国際市場における日本の競争力が急速に低下傾向にある点も見逃せません。AIをはじめIT技術における技術革新が各国で進んだ結果、日本の時間当たり労働生産性は47.9ドルで、OECD加盟37カ国中21位と半分より下位に位置しています。

世界レベルで日本が生き残っていくためにも、競争力を高める生産性向上が不可欠でしょう。

(参考:総務省統計局『労働力調査年報(2020年発表)』
(参考:日本生産性本部『労働生産性の国際比較』

生産性の計算方法

一般的には生産性(労働生産性)は、「アウトプット(産出・成果)÷インプット(投入した労働時間・リソース)」の計算式で産出できます。労働力や人員などのリソースが少ないほど、産出された成果や売上金額が多いほど、生産性が高いと読めます。

生産性を計算するには、インプットとアウトプットの数値化が必要ですが、中には数字に替えにくい指標もあります。また、特定のアウトプットとの関係が曖昧なインプット項目が出てくることもあるでしょう。各指標を適切な数値に換算するために、現場における実際の業務や投入リソースの使い道を適切な数値に反映することが大切です。

企業ができる生産性向上の取り組み例

「良い職場環境」のイメージ_笑顔で話をしている5名の社員

生産性を向上させるためには何に注意すべきか、どのような方法があり、どれを選ぶべきなのかわかりにくいかもしれません。ここでは、企業で取り組める生産性向上に向けた対策例を7つ紹介します。業務に関わるメンバー全員で取り組むことで、課題解決や成果向上も期待できます。できることから取り入れていきましょう。

業務の自動化や標準化

業務の自動化や標準化によって、生産性のインプット部分を節約できます。自動化に役立つツールとして注目されているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)では、パソコン作業の自動化などが可能です。業務内容が自動化できると、人為的なミスややり直しが削減でき、全体における時間短縮が図れます。

また、複数人が担当する作業にはルールがないと、成果の差やトラブルにつながります。マニュアルや仕組みを用いて業務フローを標準化することで、違う担当者が行っても成果が得られる上、業務効率化が可能です。

働き方改革の中でも目玉とされる、業務の自動化や標準化を適切に取り入れられると、大幅な生産性向上も期待できます。

業務を見える化する

生産性向上のためには、まず受け持っている業務を「見える化」し、正確に把握することが重要です。個人が抱えている業務を可視化することで、現在地が明確になり、目指すべきゴールや達成すべき目標が見えます。

まず関係している従業員全員に、自分が行っている業務を書き出してもらって全体のフローを把握しましょう。それぞれの業務を整理し、一人の作業を分担する、あるいが複数人の業務をまとめるなど、合理化できる部分がないか検討します。

業務を見える化して全体をマネジメントすることで、優先順位付けや取捨選択により効率化につながります。

働き方の見直し

従業員の働き方の見直しも、生産性向上に役立ちます。個人にとって最適な働き方の実現が、無駄な時間を削減しながらも、業務時間の短縮や成果向上につながります。また、従業員の健康確保やワークライフバランスの維持にも効果的です。

テレワークが浸透してきた現在では、フレックスタイムや在宅勤務などを導入している企業も増えてきました。ネットワーク接続がある環境なら場所を問わず利用できる、オンラインチャットやテレビ電話などのツールの導入も有効です。従業員が最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、勤務体制の変更や改善を検討しましょう。

従業員がスキルアップできる機会を作る

従業員個人のスキルが向上することで、同じ作業でも短い時間で完了できます。社外研修などスキルアップに役立つ機会は多数ありますが、企業や部署全体での取り組みが効果的です。

パソコン業務を限られた時間内で効率的に終わらせるために、ブラインドタッチやショートカットキーの習得が役立ちます。また、業務に必要な専門スキルやステップアップの学習も有効です。

コミュニケーションスキルの向上は、社内だけでなく取引先や受注元とのやり取りにも使えます。所属する組織の生産性向上に直結するような研修や講座を、従業員が参加しやすいよう社内での実施を検討しましょう。

従業員のモチベーションを管理する

従業員のモチベーション管理にも注力しましょう。仕事に対するモチベーションが上がりにくい環境では、高いスキルを持ち合わせていても能力を発揮することは難しく、生産性の低下につながります。逆に、モチベーションが高い状態で業務に取り組めると、高い集中力とエネルギーで作業できます。

モチベーションを高める方法は個人により異なりますが、全員に共通する施策として働く環境の整備が効果的です。快適に勤務時間を過ごすための、オフィス家具の導入や設備などが挙げられます。組織内の人間関係を円滑化する目的で、コミュニケーションを取る時間を設けることも有効です。

従業員の健康をサポートする

個人の生産性向上のために、従業員の健康サポートは必須です。従業員が病欠で休む場合、他のスタッフの負担が増え、全体における生産性の低下につながります。また、病欠しなくていい程度の不調も仕事のパフォーマンスに影響します。

生産性向上に関係なく、従業員の健康に配慮することは企業の大切な責務のひとつです。マネージャーや管理職は、社員個人が適した仕事量を受け持っているかをチェックし、健康的に働けるよう配慮しましょう。定時後の残業や休日出勤が出ないよう、ワークライフバランスの確保のために企業が一丸となって取り組むことが重要です。

事業の見直し

先述したさまざまな取り組みを実践しても、生産性に改善が見られない場合、事業内容の見直しが必要な場合もあります。生産性向上の施策を講じても結果が出ないとなると、事業の方向性と業務内容が噛み合っていない可能性があるからです。

ただ、事業の再検討は経営判断であり、部署やチームといった企業の一部分だけでは取り組めません。劇的な改善が見込める一方で、逆に大きく失敗してリソースだけ消費してしまうリスクもあります。

コストと時間がかかることを理解した上で、専門家や経験値の高い経営者などの意見を聞きながら、現実的に検討する必要があるでしょう。

生産性向上の測り方とKPI

生産性向上に向けた取り組みによる効果を測るために、具体的な指標(KPI)の設定が有効です。KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略で、施策の実施によってどのくらい生産性が向上したかを計る指標として活用できます。取り組みによる効果を数値化することで、評価や改善に役立ちます。

生産性向上を目的とする際、複数のKPIを設定、測定することを推奨します。総労働時間や人員数、有休を含めた休日数など労働に関するKPIや、売上や来客数、1人あたりの契約数など成果に関するKPIなどがあります。

また、新製品やサービスに関する業務が、売上全体のどのくらいの比率を占めるかといったKPIも、新しい要素を細かく比較できるため効果的です。

生産性向上に企業として取り組む上での注意点

「意見交換」のイメージ_真剣に意見を交換している複数名の社員を俯瞰的に見ている様子

企業において生産性向上に取り組む際には、効果的に施策を実行する上での注意点も理解する必要があります。生産性向上を優先するばかり、従業員の労働量や労働時間が増えてしまうことは本末転倒です。また、現状を的確に把握できていないと、逆効果となってしまう可能性もあります。ここでは、生産性向上に向けて注意したい3つのポイントを解説します。

課題や問題点を見える化する

まず、現在抱えている課題や問題点を「見える化」することが大切です。生産性向上施策に取り組む前に、まずは業務の全体を理解し、どこにどんな課題や問題があるのかを知る必要があります。ワークフローや業務に関わる人の労働量などを的確に把握することで、生産性向上の取り組みの効果が出やすい環境を整えられます。

また、1人ずつ業務を見ていくことで、個人単位では見つからない課題も見えてくるでしょう。改善すべき事項が見えてきたら、部署やチーム内で共有し、関係者全身が認識できている状態にします。生産性向上に特化した会議を設けることも有効です。

方針や目標を共有する

生産性向上の取り組みの方針や目標は、関係者全員で共有しましょう。関わるメンバー全員に対し、施策の方針や全体像などを周知することで、主体性を持って臨んでもらうことが可能です。また、関係者が一丸となって同じ方向を向くことで、より生産性向上における効果が期待できます。

KPIなど指標の設定や、目指すゴールと達成のための期間など、具体的な数値を含めてすべての情報を素直に報告しましょう。取り組みをスタートした後は、時間の経過とともに指標がどう変化しているかのフィードバックも重要です。定期的な報告や相談を通して、新たな課題やより効果的な目標達成の手法が見つかることもあります。

従業員の負担が増えないようにする

生産性向上を優先するあまり、長時間労働など従業員に負担が増えないように注意が必要です。労働時間や労働力などのインプットを増やすと、自動的にアウトプットもアップしますが、生産性自体は変化していません。また、従業員の労働力には限界がある上、しわ寄せがいってしまうと、社会問題化している長時間労働は改善されていないことになります。

業務効率化を求めて仕事を持ち帰る従業員がいないか、休日や平日の夜にサービス出勤していないか、などは要チェックです。従業員の業務が改善された結果として、生産性が向上しているかを随時確認する必要があるでしょう。

生産性向上の取り組みは補助金や助成金を活用できる

国や経産省などでは、働き方や業務効率の改善につながる補助金・助成金制度を用意しています。条件を満たしている場合、自社の負担を軽減しながら生産性の向上が図れます。代表的な補助金・助成金制度は下記のとおりです。

  • 業務改善助成金(厚労省):人件費への助成
  • IT導入補助金(経産省):ITツール導入コストの1/2(上限450万円)を補助
  • 雇用管理制度助成コース(厚労省・人材確保等支援助成金):スキルアップ研修など雇用に関する制度への支援
  • 設備改善等支援コース(厚労省・人材確保等支援助成金):設備導入への助成
  • 両立支援助成金(厚労省):仕事と家庭の両立、女性の活躍推進などの取り組みへ助成
  • 人材開発支援助成金(厚労省):キャリア形成や専門技能の習得に関する研修への助成
  • 生産性向上特別措置法に基づく支援制度(各自治体):経産省・中小企業庁による減税措置

上記制度の利用条件や詳細情報は更新されることがあります。利用を検討する際は、各制度の公式ホームページを参照して、最新情報を確認しましょう。

社員のコンディション維持は生産性向上のカギ!「HELPO」活用のすすめ

企業における生産性向上への取り組みは、個人レベルでの業務効率化にもつながります。ただ、従業員一人ひとりの生産性を高めるために、健康も重要な要素です。健康な身体があってこそ、日々の業務でパフォーマンスを最大限発揮できます。

万全な体調で仕事に臨めるよう、健康管理をする上でHELPOが役立ちます。「HELPO」とは、医師や看護師、薬剤師に相談できるオンラインサービスです。気になる症状がある場合はもちろん、健康不安や体質改善などの質問もできます。より良いコンディションの維持にHELPOの活用がおすすめです。

まとめ

「ソリューション」のイメージ_笑顔で斜め上を見ている1名の女性社員と2名の男性社員

国内における労働力の減少や、国際市場における競争力の低下が目立つ昨今、生産性向上に取り組む企業が増えています。個人の生産性向上のために企業ができることは多岐に渡りますが、施策の実行とともに、KPIなどの指標を用いて結果を測定することも大切です。

オンライン相談サービス「HELPO」では、24時間いつでも医師や看護師、薬剤師とやり取りが可能です。健康診断の結果に応じた対策や生活習慣の改善など、主だった症状がなくても気軽に相談できます。従業員の健康管理やコンディションの調整に「HELPO」の活用をぜひご検討ください。

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