特定健診・特定保健指導は義務なのか?受けやすくするためにすべきこととは?

特定健診・特定保健指導は、生活習慣病の予防のためにとても重要です。しかし、社員から、受けることは「義務なのか」と問われて、断られるケースもあるかもしれません。

特定健診・特定保健指導を推進することができれば、社員の健康が保たれ、企業も健康経営を進めることができるようになり、社会的評価の向上も期待できます。

そこでこの記事では、特定健診・特定保健指導の目的や実施内容、義務なのかどうか、受けない場合のリスク、推進が企業にもたらすメリットについて解説し、特定健診・特定保健指導を受けやすくするためにすべきことを示します。

特定健診・特定保健指導とは?

「ヘルスケア」のイメージ_医師の手の上にハートの模型が乗っている様子

まず特定保健指導を行うにあたっては、それに先立って、特定健診が行われなければなりません。特定保健指導と特定健診は、どのような関係にあるのでしょうか。

特定健診・特定保健指導とは何か、特定健診・特定保健指導の目的について説明します。

特定健診・特定保健指導とは何か

まず、特定健診(特定健康診査)が医療保険者(健保組合・市町村など)によって実施されます。特定健診では、メタボリックシンドロームのリスクを検査します。健診の結果、リスクがあるとされた人は、特定保健指導の対象者となります。

特定保健指導とは、メタボリックシンドロームのリスクを下げるために、医師や保健師管理栄養士などによって行われる保健指導のことです。生活習慣が改善できるように、リスク数に応じて目標を設定して実行できるように支援します。

特定保健指導には2つのタイプがあります。メタボリックシンドロームのリスク数が比較的少ない人に対しては、生活習慣改善のきっかけを作る「動機付け支援」がなされます。また、リスク数がより高い人には、生活習慣の改善を継続的に支援する「積極的支援」がなされます。

特定健診・特定保健指導の目的

特定健診・特定保健指導の目的は、生活習慣病の発病を予防することです。生活習慣病は自覚症状がなくても進行してしまうので、発症前の未病段階で対応して改善することが重要です。

メタボリックシンドロームは生活習慣病の入り口と言えるので、そのリスクを下げる必要があります。バランスの取れた食生活や適度な運動など、生活習慣を改善することでリスクを下げることが一般的です。

特定健診と特定保健指導の実施内容 

「診療」のイメージ_笑顔で話をしている医師と、話を聞く夫婦

生活習慣病を予防するという目的のために、特定健診と特定保健指導では、実際にどのようなことをするのでしょうか。

特定健診の結果を受けてから特定保健指導へと至る流れと、特定健診の実施内容、2つのタイプ別の特定保健指導の内容について解説します。

特定健診と特定保健指導の流れ

特定健診の結果を受けて、特定保健指導対象者が選定されます。対象者とならなかった人に対しては、健診結果の見方、生活習慣病の特性、生活習慣の改善のための情報提供をして終了となります。

特定保健指導対象者には、メタボリックシンドロームのリスク数に応じて、「動機付け支援」もしくは「積極的支援」が実施されます。

特定健診と特定保健指導の流れ(図)

特定健診の実施内容

特定健診の検査項目は次の通りです。服薬歴や喫煙歴などについての質問票、腹囲・体重などについての身体測定、診察、健康状態などについての問診、血圧、血中脂質、肝機能、血糖、尿です。

また、医師の判断により、以下の詳細な健診項目の検査が実施されます。心電図、眼底検査、貧血検査、血清クレアチニン検査です。

これらの検査結果が基準値内であれば、指導の対象にはなりません。もちろん、基準値を超えた場合は、精密検査を行ったり、医療機関の受診をしたりすることになります。

特定保健指導の実施内容

特定健診の結果を受けて、特定保健指導対象者が選定されます。選定方法は次の通りです。まず、腹囲とBMIから肥満リスクが判定されます。該当しない人には、健診結果の見方や生活習慣の改善のための情報提供を行います。次に、健診結果と質問票により追加リスク数をカウントします。

最後に、年齢、肥満リスク、追加リスク数を踏まえて、特定保健指導のレベルが選定されます。

特定保健指導の実施内容について説明します。「動機付け支援」の場合、まず、保健師や管理栄養士等との個別面接やグループ学習により、生活習慣改善に向けた、それぞれのライフスタイルに合った、日常で取り組めそうな目標を設定します。

次に、対象者は目標に沿って生活習慣の改善を行います。3か月以上経過後に、生活習慣の変化、身体状況などについて確認します。

一方「積極的支援」における支援は、「動機付け支援」と同様に目標を設定して、対象者は生活習慣の改善を実施します。その後、3か月以上、継続的に、生活習慣が改善できるように支援を行います。3か月以上経過した後に、生活習慣の変化、身体状況などについて確認します。

特定健診・特定保健指導は義務なのか?

「考える」イメージ_3名の男女が顎に手を当てて考え込んでいる様子

企業において、特定健診・特定保健指導を推進しようとする時に、社員から、それらを受けることは「義務なのか」と問われることもあるかもしれません。

実際に、特定健診・特定保健指導は誰の義務なのか、義務化されている理由、費用負担は誰が担うのかについて説明します。

特定健診・特定保健指導は誰の義務なのか?

特定健診・特定保健指導の実施は、「高齢者の医療の確保に関する法律」により、医療保険者(健保組合・市町村など)に義務付けられています。

一方、企業には、「労働安全衛生法」により健康診断が義務付けられています。ただし、実際には、特定健診の基本的な項目は、企業が実施する健康診断の項目とほぼ一致しています。

そして、企業にとって、特定保健指導の実施は努力義務となっています。さらに、対象者にとっては、特定保健指導の受診は義務ではありません。

特定健診が義務化されている理由

高齢化が急速に進んでいるために、国民医療費の中で、がん、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病が占める割合が増えてきています。また、日本人の死亡原因の半数以上を生活習慣病が占めています。

さらに、メタボリックシンドロームについては、予備軍までも含めると、40歳以上の男性の2人に1人、女性の5人に1人が該当すると言われています。

このような国民の健康に関する懸念を背景として、生活習慣病の発症、重症化、合併症の進行を予防する必要性が高まってきました。そのために、特定健診が義務化されているのです。

特定健診・特定保健指導の費用負担は?

特定健診・特定保健指導の費用負担は誰が担うのでしょうか。企業が実施する事業者健診と特定健診が同時に実施される場合、特定健診と重複する健診項目は、事業者が費用を負担します。

なぜなら「高齢者の医療の確保に関する法律」によると、「労働安全衛生法」で義務付けられた企業による健診は、特定健診よりも実施が優先されることになっているので、事業者が費用を負担することになるのです。また、事業者健診と特定健診が重複しない健診項目については、医療保険者が負担します。

特定健診・特定保健指導を受けない場合のリスク

「リスク」のイメージ_RISKとプリントされた木製のブロック

生活習慣病の発病を予防するために行われる、特定健診・特定保健指導ですが、もしも受けなかった場合のリスクはどのようなことなのでしょうか。

企業、保険者(健保組合・市町村など)、社員ごとにリスクは異なります。それぞれが抱えるリスクについて解説します。

企業が抱えるリスク

社員に特定健診・特定保健指導を受けさせない場合、企業には経営の安定を脅かす、大きなリスクが生じます。

第一に、主力社員の健康悪化により、生産性が低下することです。生活習慣の改善に取り組めず、メタボリックシンドロームのリスクを下げることができません。そのため、生活習慣病を発症する社員も出てきます。健康を損ない、モチベーションや集中力が低下して、社員のパフォーマンスが落ちて生産性が下がります。

第二に、主力社員の健康が損なわれ、緊急入院したり、長期療養したりする人が増えてきます。その結果、人的資源の低下を余儀なくされます。

保険者(健保組合・市町村など)が抱えるリスク

後期高齢者医療制度は、医療給付費等の財源のうち、約4割が健康保険組合などからの支援金で賄う仕組みです。この支援金が後期高齢者支援金です。保険者には、特定健診・特定保健指導の実施が義務付けられているため、実施率に応じて、国に収めるこの後期高齢者支援金の額が加算されてしまいます。

特定健診・特定保健指導を受けないと、保険者にとってはペナルティーが加算されてしまうのです。

社員が抱えるリスク

社員が、特定健診・特定保健指導を受けないと、生活習慣の改善に取り組めません。すると、メタボリックシンドロームや肥満も改善できず、生活習慣病の発生リスクを高めたり、合併症を引き起こしたりしてしまいます。

健康状態が悪化することにより、家計からの医療費の支出が増え、通院や入院によって日常生活や仕事にも様々な影響が及びます。その結果、生活の質が下がり、精神的ストレスも増大してしまうという悪循環となってしまいます。

特定保健指導の推進が企業にもたらす3つのメリット

「看護師」のイメージ_笑顔で前を向いている看護師

特定保健指導を推進して実施率が上がった場合、直接的なメリットを享受するのは保険者です。企業にもたらされるのは、あくまでも間接的なメリットです。

ただしそれでも、企業には特定保健指導の推進がもたらすメリットがあります。社員の業務パフォーマンス向上、優秀な人材の確保、健康経営優良法人の認定を受けやすくなるという3つのメリットについて解説します。

社員の業務パフォーマンス向上

特定保健指導の推進によって、生活習慣が改善されます。社員は、生活習慣病を発症する前の、未病の段階で健康を取り戻せるのです。

心身ともに健康であれば、労働に対するモチベーションが上がり、集中力も高まり、仕事に対して積極的に取り組めます。また、生活習慣を改善して健康を取り戻していることは、本人だけではなく、周囲の社員にも好影響を与えます。

健康な社員が増えることによって、社内の雰囲気も良くなり、人間関係上のストレスも減り、社員の業務パフォーマンス向上につながります。結果として、企業の生産性向上がもたらされることが期待されます。

優秀な人材の確保

特定保健指導の推進によって、社員の健康管理に力を入れている企業であるというイメージが作られます。これは、採用活動において、求職者には好印象を与えるポイントです。企業に対する求職者が増加すれば、おのずと優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

また、社員の健康が保たれていれば、健康を損なって退職・休職する人も減少します。また、人間関係のストレスも減り、メンタルヘルスによる離職も減るでしょう。結果として、優秀な人材の流出が防げます。

健康経営優良法人の認定を受けやすくなる

健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度です。特定保健指導の推進によって、この健康経営優良法人の認定を受けやすくなります。「健康経営優良法人」の認定の認定を受けると、社員、求職者、関係企業、金融機関などからの社会的評価が得られます。

さらに、次のようなメリットが生じます。
・貸付利率の引き下げなどの金利優遇
・関連助成金の活用
・政府が民間からものやサービスを購入する際の「公共調達」における入札の加点
・保険会社の保険料の割引

特定保健指導推進を図るためには何をする?

特定保健指導の推進を図るためには、企業側が環境を整えることが重要です。例えば、健康管理アプリなどの健康経営に関するサービスを利用することによって、特定保健指導の推進が図りやすい環境を作っている企業もあります。

サービスによって機能は異なりますが、健診結果や特定保健指導の対象者などのデータを管理し、健診後の社員へのアフターケアを行うことができます。また、アンケートを配信して社員に回答してもらい、健康状態を管理するサービスなどもあります。

また、企業として、特定保健指導の実施場所を提供したり、就労時間内に特定保健指導を受けられるように職場の体制を見直している事例もあります。

特定保健指導を推進するにあたって、メタボリックシンドローム対策など、指導内容と親和性の高い健康医療相談アプリが「HELPO」です。

ちょっとした体調不良を感じた時、医師・看護師・薬剤師による医療専門チームに健康医療相談をして、チャット形式で24時間365日アドバイスをもらえます。

頼りになるのは、体調不良時だけではありません。健康についての気がかりや疑問、毎日の生活習慣の管理などについても相談できますので、生活習慣の改善と、特定保健指導の推進・実践には「HELPO」が役立つでしょう。

まとめ

「健康」のイメージ_笑顔でストレッチをしている男性

特定健診・特定保健指導の目的は、生活習慣病の発病を予防することです。発症前の未病段階で対応して改善することが重要です。そのため、医療保険者(健保組合・市町村など)に義務付けられています。

特定保健指導の推進が企業にもたらすメリットには、社員の業務パフォーマンス向上、優秀な人材の確保、健康経営優良法人の認定を受けやすくなるなどがありますので、積極的に推進しましょう。

特定保健指導の推進を図るためには、企業側が環境を整えることが重要です。例えば、指導内容と親和性の高い健康医療相談アプリ「HELPO」を導入してはいかがでしょうか。

ヘルスケアテクノロジーズでは、特定保健指導の推進についてのご相談をお受けいたします。健康医療相談アプリ「HELPO」をご用意して、企業様からのお問い合わせをお待ちしております。

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