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人的資本の開示例・具体例をご紹介
2023年3月期から、「有価証券報告書」に人的資本の情報を開示することが義務化されました。しかし、どのように記載すれば良いかわからない方もいるのではないでしょうか。また、人的資本の情報開示の対象企業ではないけれど、ステークホルダーに公表するため開示例を知りたい方もいるでしょう。
そこで本記事では、人的資本の開示項目や企業の開示例を解説します。
目次
人的資本とは?

「人的資本」とは、個人の教育、経験、技能、知識などの非物的資産を指し、人の持つスキルや能力を資本としてとらえる考え方です。人的資本は経済成長や生産性向上の要因として重要であり、企業や国が競争力を持つための基盤となる要素の一つです。
個人の学歴や取得した資格、受けたトレーニング、仕事での経験などが人的資本に影響します。また、従業員の健康も労働生産性に直接影響するため、人的資本の要素として考慮されることがあります。
人的資本の情報開示義務化

人的資本の情報開示とは、自社の人材戦略、人材育成、社内環境整備の方針や成果などの情報を、社内外に公表することです。人的資本の情報開示の基準は国によって異なり、それぞれの国で任意の基準やガイドラインが設けられています。
2018年にISO(国際標準化機構)が発表した「ISO30414」は、欧米を中心として世界中で取り入れられている情報開示のガイドラインです。日本では、2023年3月期決算から大手企業4,000社を対象として義務化されました。有価証券報告書に女性管理職比率、人材への投資額、従業員満足度などの人的資本に関する情報を記載し、ステークホルダーに公開することを義務付けています。
人的資本の開示項目
人的資本の開示項目は、以下の7分野19項目です。
育成 | リーダーシップ |
育成 | |
スキル/経験 | |
エンゲージメント | エンゲージメント |
流動性 | 採用 |
維持 | |
サクセッション | |
ダイバーシティ | ダイバーシティ |
被差別 | |
育児休業 | |
健康・安全 | 精神的健康 |
身体的健康 | |
安全 | |
労働慣行 | 労働慣行 |
児童労働/強制労働 | |
賃金の公正性 | |
福利厚生 | |
組合との関係 | |
コンプライアンス/倫理 | コンプライアンス/倫理 |
人的資本の開示例

ここでは、7社の2023年3月の有価証券報告書に記載されている人的資本の開示例をご紹介します。
オムロン
オムロン株式会社では、人的資本に関する取り組みとして「ガバナンスや戦略」「リスク管理」「指標と目標」などの方針を示しています。また、以下の情報が開示されています。
- 女性管理職数
- 女性管理職比率
- 男性の育児休業等取得率
- 男女の賃金差異
人的資本を活用し企業価値の向上ができているかを測る指標として「人的創造性」を設定しており、2024年度には2021年度比+7%を目標とすることを掲げています。
第一生命ホールディングス
第一生命ホールディングス株式会社では、「人的資本・多様性に関する取り組み」として人材育成、社内環境整備の方針を掲げています。また、人材育成と社内環境整備に関する指標に「事業戦略に伴う人財シフト等」「次世代グローバル経営リーダー候補」「女性組織長比率」「Myキャリア制度における公募職数」をあげ、具体的な数値で実績と目標を公開しています。
他に、以下のような人的資本情報を開示しています。
- 管理職に占める女性労働者の割合
- 男性労働者の育児休業取得率
- 労働者の男女の賃金の格差
村田製作所
株式会社村田製作所では、人材は価値創造の中核であると捉え「人材の獲得と育成」「従業員エンゲージメントの向上」「多様な人材の活躍」を重要課題として取り組みを進めていると記載しています。他にも、以下のような情報が開示されていました。
- 管理職に占める女性従業員の割合
- 男性の育児休業取得率及び男女の賃金格差
また、従業員エンゲージメント肯定回答比率に関して、2024年度に70%以上、2030年度には76%を目標とすることを掲げています。
戸田建設
戸田建設株式会社では、「人材開発」「働きがい改革」「ダイバーシティ&インクルージョン」などの項目それぞれに自社における方針を掲載しています。具体的には、次世代経営人材の育成のためにキャリアコーチによる1on1のコーチングを実施したり、LGBTQが働きやすい制度・環境の整備としてLGBTQガイドブック発行、研修実施を推進したりしていると公表されていました。
また、以下の情報を開示しています。
- 管理職に占める女性労働者の割合
- 男性労働者の育児休業取得率
- 労働者の男女の賃金の差異
- 女性従業員比率
- 女性管理職比率
- 女性役員比率
明治ホールディングス
明治ホールディングス株式会社では、「ダイバーシティ&インクルージョン」「健康経営」「人材開発」「労働安全」を重要テーマとして掲げ、分科会を設置したと記載されています。他に開示されている情報は以下の通りです。
- 研修の受講人数・平均受講時間・平均受講費用
- 女性管理職比率
- 障がい者雇用率
- 男性従業員の育児休業取得率
明治ホールディングスでは、「女性リーダー数」「中核人材キャリア入社比率」「管理職グローバル人材」などに対し、2026年度、2040年度、2050年度の目標を掲げています。
TOTO
TOTO株式会社では、人材育成方針として「多様な人材の活躍」「多様な働き方」の実現を掲げています。また、社内環境方針として「健康で安心して働ける環境づくり」「健康経営の実践」をあげています。他に開示されている情報は以下の通りです。
- 女性管理職比率
- 障がい者雇用比率
- 男性育児休業等取得数
- 海外グループ会社幹部研修受講者数
- DX研修受講率
- 意識調査「安心・やりがい指標」
上記の項目それぞれに、22年度の実績と23年度の目標が示されています。
住友商事
住友商事株式会社では、2020年9月に制定した「グローバル人材マネジメントポリシー」で掲げる「目指す個の姿」と「目指す組織の姿」を明確に示しています。具体的な取り組み事例として以下があげられています。
- 子のみを連れて海外に駐在する従業員への支援制度の導入
- 仕事と育児・介護の両立支援ハンドブックの作成
- 育児コンサルタントサービスの導入
- 保育施設との提携
- アンコンシャスバイアス等に関する各種研修の実施
また、「社員エンゲージメント指数」「社員を活かす環境指数」「女性管理職比率」などの実績数と目標が記載されていました。
人的資本経営には「HELPO」
人的資本経営を実現するためには、従業員の健康も重要なポイントになります。従業員が健康的に働けなければ、教育に投資してもメンタルヘルス不調などにより学べない場合もあるでしょう。従業員の健康は、人的資本の土台とも言えるのではないでしょうか。従業員の健康を通して人的資本経営を実現したいと考えている経営者や人事労務担当者の方におすすめなのが、ヘルスケアアプリ「HELPO(ヘルポ)」です。
HELPOは24時間365日いつでも医療専門チームにチャットで相談できるスマホアプリです。医療専門チームには医師や看護師、薬剤師が在籍しているのでさまざまな相談に対応しています。従業員の中には、忙しくて病院に行けない方もいるでしょう。HELPOなら、空いている時間、不安になった時にいつでも相談可能です。不安になった時点で相談できるため、メンタルヘルス不調などの未然防止にもつながります。気になる方はぜひ、導入を検討してみてください。
人的資本の開示例を参考に
人的資本の開示が義務化されているのは大手企業4,000社です。人的資本の情報を開示すればステークホルダーから選ばれやすくなる可能性があるため、対象企業でない場合でも積極的に開示するのがおすすめです。また、人的資本の開示をきっかけに人材への投資を積極的に行えば、従業員にとって働きやすい企業になり、満足度や生産性アップなども期待できるでしょう。今回ご紹介した人的資本の開示例を参考に、報告書を作成してみてください。
人的資本経営の実現におすすめなのがヘルスケアアプリ「HELPO」です。HELPOは24時間365日、いつでも心や身体の不安を相談できる上、回数に制限はありません。人的資本経営の施策の一つとして、ぜひ導入を検討してみてください。


